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あい、見えます。
第8章 見せて、触れて
「じゃあ……、今度、佐々木さんの作るカクテル、飲んでみたいです」
てらいもなく、すんなりと気持ちが言葉になった。
けれど、また、彼は妙な沈黙を落とす。
返ってこない言葉に、遥は無意識に声を潜める。
「佐々木さん?」
「……困ったな」
「え」
言葉よりも、声のトーンに、遥は目を瞬かせる。
だって、彼は、困っている人の声をしていない。
どうしようかと迷う間に、佐々木が息だけで笑う音が聞こえた。
「貴方は、いとも簡単に、私を喜ばせてくれるから」
「……」
苦笑混じりの声に、胸が甘苦しく高鳴った。
暖かい陽だまりのように感じていた感覚が、急に締め付けるような思いに変わっていく。
もぞもぞと仰向けに戻りながら、思わず口元を右手で抑える。
「ご、ごめんなさい」
「あぁ。いいえ。考えすぎないで。……そのままの遥さんでいて欲しいんですから」
「はい……」
なんだか、心も身体も、おっかなびっくりになっている。
心臓の鼓動が聞こえてしまいそうな、味わったことのない雰囲気に、遥の身体が布団の中で、微かに縮こまった。
また、ほんの少しの沈黙。
誰が相手でも、会話が無くなると不安になるけれど、この人が相手だと、いつも以上に不安になることを知る。
(なんで? 落ち着かない…)
耐え切れずに顔を向けかけた時に、佐々木の深い声が、何事も無かったように遥に語りかけた。
「もう一つ、聞いてもいいですか?」
その声に、酷く安心した。
暗闇で縋るものを探している子供みたいだ。
自分の心が、これまでに感じたことのない波長で揺れることに驚きながらも、遥は小さく佐々木に頷いてみせた。
佐々木の吐息からも、安堵した様子が伝わってくる。
(佐々木さん、も?)
彼も同じ気持ちなのか。
けれど、そんなこと考える暇もなく、佐々木は遥に不思議なことを尋ねてきた。
「初めてお会いした時、随分、浮かない顔をしていたようでしたが、何か、ありましたか?」
「え?」
「家に入るのを、ためらっているような。そんな風に見えて、少し、心配でした」
「……あぁ、あの時」
言われて、彼と出逢った初夏の夜を思い出す。
てらいもなく、すんなりと気持ちが言葉になった。
けれど、また、彼は妙な沈黙を落とす。
返ってこない言葉に、遥は無意識に声を潜める。
「佐々木さん?」
「……困ったな」
「え」
言葉よりも、声のトーンに、遥は目を瞬かせる。
だって、彼は、困っている人の声をしていない。
どうしようかと迷う間に、佐々木が息だけで笑う音が聞こえた。
「貴方は、いとも簡単に、私を喜ばせてくれるから」
「……」
苦笑混じりの声に、胸が甘苦しく高鳴った。
暖かい陽だまりのように感じていた感覚が、急に締め付けるような思いに変わっていく。
もぞもぞと仰向けに戻りながら、思わず口元を右手で抑える。
「ご、ごめんなさい」
「あぁ。いいえ。考えすぎないで。……そのままの遥さんでいて欲しいんですから」
「はい……」
なんだか、心も身体も、おっかなびっくりになっている。
心臓の鼓動が聞こえてしまいそうな、味わったことのない雰囲気に、遥の身体が布団の中で、微かに縮こまった。
また、ほんの少しの沈黙。
誰が相手でも、会話が無くなると不安になるけれど、この人が相手だと、いつも以上に不安になることを知る。
(なんで? 落ち着かない…)
耐え切れずに顔を向けかけた時に、佐々木の深い声が、何事も無かったように遥に語りかけた。
「もう一つ、聞いてもいいですか?」
その声に、酷く安心した。
暗闇で縋るものを探している子供みたいだ。
自分の心が、これまでに感じたことのない波長で揺れることに驚きながらも、遥は小さく佐々木に頷いてみせた。
佐々木の吐息からも、安堵した様子が伝わってくる。
(佐々木さん、も?)
彼も同じ気持ちなのか。
けれど、そんなこと考える暇もなく、佐々木は遥に不思議なことを尋ねてきた。
「初めてお会いした時、随分、浮かない顔をしていたようでしたが、何か、ありましたか?」
「え?」
「家に入るのを、ためらっているような。そんな風に見えて、少し、心配でした」
「……あぁ、あの時」
言われて、彼と出逢った初夏の夜を思い出す。