この作品は18歳未満閲覧禁止です

  • テキストサイズ
あい、見えます。
第8章 見せて、触れて
「じゃあ……、今度、佐々木さんの作るカクテル、飲んでみたいです」

てらいもなく、すんなりと気持ちが言葉になった。

けれど、また、彼は妙な沈黙を落とす。

返ってこない言葉に、遥は無意識に声を潜める。

「佐々木さん?」

「……困ったな」

「え」

言葉よりも、声のトーンに、遥は目を瞬かせる。

だって、彼は、困っている人の声をしていない。

どうしようかと迷う間に、佐々木が息だけで笑う音が聞こえた。

「貴方は、いとも簡単に、私を喜ばせてくれるから」

「……」

苦笑混じりの声に、胸が甘苦しく高鳴った。

暖かい陽だまりのように感じていた感覚が、急に締め付けるような思いに変わっていく。

もぞもぞと仰向けに戻りながら、思わず口元を右手で抑える。

「ご、ごめんなさい」

「あぁ。いいえ。考えすぎないで。……そのままの遥さんでいて欲しいんですから」

「はい……」

なんだか、心も身体も、おっかなびっくりになっている。

心臓の鼓動が聞こえてしまいそうな、味わったことのない雰囲気に、遥の身体が布団の中で、微かに縮こまった。

また、ほんの少しの沈黙。

誰が相手でも、会話が無くなると不安になるけれど、この人が相手だと、いつも以上に不安になることを知る。

(なんで? 落ち着かない…)

耐え切れずに顔を向けかけた時に、佐々木の深い声が、何事も無かったように遥に語りかけた。

「もう一つ、聞いてもいいですか?」

その声に、酷く安心した。

暗闇で縋るものを探している子供みたいだ。

自分の心が、これまでに感じたことのない波長で揺れることに驚きながらも、遥は小さく佐々木に頷いてみせた。

佐々木の吐息からも、安堵した様子が伝わってくる。

(佐々木さん、も?)

彼も同じ気持ちなのか。

けれど、そんなこと考える暇もなく、佐々木は遥に不思議なことを尋ねてきた。

「初めてお会いした時、随分、浮かない顔をしていたようでしたが、何か、ありましたか?」

「え?」

「家に入るのを、ためらっているような。そんな風に見えて、少し、心配でした」

「……あぁ、あの時」

言われて、彼と出逢った初夏の夜を思い出す。


/110ページ
無料で読める大人のケータイ官能小説とは?
無料で読める大人のケータイ官能小説は、ケータイやスマホ・パソコンから無料で気軽に読むことができるネット小説サイトです。
自分で書いた官能小説や体験談を簡単に公開、連載することができます。しおり機能やメッセージ機能など便利な機能も充実!
お気に入りの作品や作者を探して楽しんだり、自分が小説を公開してたくさんの人に読んでもらおう!

ケータイからアクセスしたい人は下のQRコードをスキャンしてね!!

スマートフォン対応!QRコード


公式Twitterあります

当サイトの公式Twitterもあります!
フォローよろしくお願いします。
>コチラから



TOPTOPへ