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テンプテーション【完結】
第3章 囲い込まれる野良猫
 最近のマンションってすごいなぁと感心していると、カードキーで中扉を開けてくれて、またもや歓声を上げてしまった。
 だってね、この中扉も檜の扉だったんだけど、開いた途端、向こう側は床は黒い大理石で、壁は木と明かりが交互になっていて、とても明るくて綺麗だったのだ。しかも突き当たりの壁は黒くてつやつやしていて、ついじっと見つめていると、多島さんが気がついて解説してくれた。
「この壁はエントランスから入ってすぐの目立つ場所ですので、漆塗りの壁を採用しています」
「漆塗りっ?」
 このマンション、もしかしなくても超高級なのですか……?
「和をコンセプトにしたデザイナーズマンションなのですよ」
 私は思わず貴博さんを見上げていた。
「気に入った?」
 私が和物に弱いのをもしかして貴博さん、知っていて……?
「部屋は最上階のメゾネットタイプと聞いているよ」
 メゾネットタイプって、マンション内なのに部屋に階段があるあれですかっ?
「ワンフロア全部と上の階はフロア半分だけど、一部屋だけでかなり広いと聞いてる」
 まったくもって想像がつかなくてくらくらしていると、貴博さんは楽しそうに笑った。
「その様子だと部屋の中を見ないで決めても問題なさそうだけど、見ておくか」
 許容範囲を越しすぎていてくらくらしてきたけど、私は一応、確認するためにうなずいた。
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