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テンプテーション【完結】
第3章 囲い込まれる野良猫
     *

 結局、会社には向かわないで電車に乗り、貴博さんの部屋に帰った。
 貴博さんは部屋に着くなり私の唇を塞ぎ、服を脱がしつつ、貴博さんも服を脱ぐと、寝室のベッドの上に押し倒された。
 貴博さんをもっと感じたくて抱きつくと、息も出来ないくらいの深いキスをされた。貴博さんって淡泊な人なのかと思っていたのだけど、そうでもなかったみたい。
 油断するとなにかに溺れそうな感覚が強くて、私は必死に貴博さんにしがみついていた。
「たっ……たか……ひろっ、さんっ」
 深いキスを繰り返されてしまい、息が苦しくなってきたので、必死になって貴博さんの名前を呼ぶ。そうするとすごく嬉しそうな表情を返された。
「こ……わい、です」
「怖い?」
「貴博さんっていう海に溺れそうで、怖い、の」
 貴博さんは目を細めて私を見て、それからちゅっと軽く頬にキスをしてから顔を覗き込んできた。
「ちょっと性急に求めすぎた?」
「そ……なの、かも、しれま……せん」
「俺がどれだけ真白のことを愛しているのか知ってほしかったんだけど、もう少し手加減する」
 貴博さんはそう言ってくれて、手を緩めてくれた。
 だけどそうすると今度は妙な羞恥心がこみ上げてきて、困った。
 貴博さんが触れているところがとても気持ちがいい。そうではないところもじんわりとした気持ち良さが伝わってくる。ゆるゆるとマッサージをするように、だけど明らかに私の官能を刺激するような手の動きで、焦れったくて仕方がない。
「あ……んんっ」
 緩やかだけど的確な貴博さんの手のひらに、もっと感じたくなってきた。だけどどう言えばいいのか分からなくて、貴博さんに抱きついた。
「もっと……」
「まだ強い?」
 貴博さんはもっと手を緩め、私の皮膚を撫でるようにしか触れてくれなくなった。
 そうではなくて、強くと言いたいのだけど、羞恥心で言えない。だから身体を擦り付けるようにしたら、くすりと笑われた。
「物足りない?」
 その通りだったから素直にうなずいたら、貴博さんは妖しく笑った。
「少しずつ素直になってく真白がかわいい」
 じっと瞳をのぞき込まれ、そして唇を塞がれた。
「一歩ずつでいいから、俺と気持ちよくなろう?」
 貴博さんの言葉に私はぎゅっと抱きついた。
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