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テンプテーション【完結】
第4章 周辺がにぎやかすぎて困ります!
 駅へと向かい、電車に乗っていつもの癖で自分の部屋へ向かおうとして、ふと立ち止まった。
 貴博さんが朝の別れ際、部屋に来るように言っていたけれど、貴博さんの部屋の鍵を預かっていなかった。それは貴博さんと合流して開けてもらえばいいからどうにでもなるとして。
 それ以外に問題がある。貴博さんの部屋に置いている着替えは今日までのしかない。明日も早く帰れるかどうか分からないから、一度、部屋に戻って取ってきた方がいいような気がする。それに郵便などの確認もしたい。となると、着替えを持って貴博さんの部屋に行けばいいのだろうか。
 悩んでいると、鞄の中でスマホが震えたのが分かった。画面を見ると、貴博さんからのメッセージだった。
《お疲れさま
 仕事が終わったら、メッセージください》
 うん、絶妙なタイミング。
《お疲れさまです
 今日は残業をしないで、すでに帰ってきています》
 すると貴博さんからすぐに返信が来た。
《真白の部屋に集合》
 私がどうしようとここで途方に暮れていたのを、完全に読まれてる。
 了承のメッセージを返し、自分の借りている部屋へと向かった。

 土曜日の夜にここに一度、荷物を取りに来ていたにもかかわらず、なんだかとても長い間、離れていたような気がする。そう思いながら部屋の前に行くと、貴博さんが来ている気配はなかった。待たせていたら悪いなと思ったからほっとしつつ、郵便を確認したけれど、チラシしか入っていなかった。
 鍵を開けて部屋に入る。数日空けていただけなのに、とても懐かしい。だけどどうしてだろう。五年近くをここで過ごしたのに、妙によそよそしく感じてしまう。
 変わったつもりはなかったけれど、貴博さんに初めて抱かれてからこちら、私の中で変化があったのだろう。
 どこかよそよそしい部屋で椅子に座ったけれど、落ち着かなかったので準備をすることにした。
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