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テンプテーション【完結】
第4章 周辺がにぎやかすぎて困ります!
 さゆみちゃんと話をしていて、ここまでかみ合わないのは初めてだ。
 状況がまったく分からなくて戸惑いの視線を向けると、さゆみちゃんは笑った。
「真白くん、お昼は短い。食べながら話をしよう」
「あ……うん、そうだね」
 私とさゆみちゃんは隣り合い、窓の外を見ながらお昼を広げた。その間は無言だ。
 さゆみちゃんも私もそれほど喋らない。だから二人でいるときはいつもこんな感じだったし、別に居心地の悪さはなかったのだけど、今日は別だ。
 久しぶりに会ったという以外にもさゆみちゃんの態度が妙に他人行儀で、それがよそよそしいというか、据わりを悪く感じさせていた。
「彼氏ができたってメッセージ来たけれど」
「うん、そうなんだ」
「それってその……中本課長?」
「いや、違うよ」
「……え?」
 さゆみちゃんは私と同じようにコンビニの袋からゼリーを取り出すと蓋を開けながら、私の質問にとんでもない答えを返してきた。
 私はパックの野菜ジュースにストローをさした状態で固まってしまった。
「二週間くらい前に彼氏ができたんだ」
「……うん」
 さゆみちゃんは透明のスプーンを袋から取り出しながら話し始めた。私はそれを横目で見つつ、袋からサンドイッチを取り出して封を開けた。
「部署の一部の人たちが合コンをして、頭合わせであたしはそれに参加させられたんだ」
「……合コン」
 さゆみちゃんと合コンという言葉の組み合わせに不思議に思いつつ、相づちを打つ。
「正直、つまらなかったよ。たばこと酒の臭いに気分が悪くなって、トイレに立ったところを助けてくれた男がいてさ。家まで送ってくれて、そのときにどうやら付き合わないかって言われたようなんだ。そのとき、ものすごく気持ちが悪くて覚えていないんだが、あたしはうなずいたらしい」
「そんなに調子が悪かったの? 呼んでくれたら行ったのに」
「真白くんに迷惑は掛けられないよ」
 というさゆみちゃんは今もあまり顔色は良くない。
「体調、悪いの……?」
 私の質問に、さゆみちゃんは爆弾発言をしてくれた。
「つわりだ」
「……えええっ?」
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