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テンプテーション【完結】
第4章 周辺がにぎやかすぎて困ります!
 ちょっと待って? なんだか計算が合わなくない?
 彼氏ができたのは二週間前で、つわりって妊娠してすぐに出る症状でもないから……。
 と私がパニックになっている横で、さゆみちゃんはスプーンでゼリーをすくってつるんと食べていた。
「どうもここのところ、気持ちが悪くて仕方がないと思っていたんだが、どうも妊娠したらしいんだよ」
「らしいって……。検査は?」
「してない」
「……は?」
 さゆみちゃんのことは不思議ちゃんだとは思っていたけれど、ここまでひどかった……?
「あの……つかぬ事をお伺いしますが」
「なんだ?」
「彼氏とは、その……」
「セックスはしてない」
「……………………」
 さゆみちゃんはマイペースでゼリーを食べている。私は横で、パッケージを開けたけれど、サンドイッチを一口も食べられていない。
 なにこの衝撃。
「セックスは中本課長としかしてない」
「…………────」
 えーっと、なんかややこしいことになっているってこと?
「中本課長とは?」
「セフレだ」
 なに、これ。
「……いつから」
 私が聞けたのはそれだけだった。
 さゆみちゃんは瞬きをした後、私に顔を向けてきた。
「入社してすぐだが?」
「…………は?」
「研修中からだ」
「はぁ?」
 どこでどう繋がったらさゆみちゃんと中本課長っていう組み合わせ、しかも、セ……セ、セフレっ?
「真白がいる部署は新人研修も担当しているだろう?」
「……してるね」
「あたしたちの新人研修を担当したのは中本課長だったんだ」
「そうだったんだ、知らなかった」
「資料の受け取りはなぜかあたしがしていて、そこで中本課長と知り合ったんだ」
「そういえば、初日にさゆみちゃんが指名されていたよね」
「その指名をしてきたのが中本課長だよ」
「あー……」
 今の今まであの時の最初の挨拶をした人と中本課長が結びついていなかった。だけど言われたら、そうだった、あれは確かに中本課長だった。
「一目惚れしたんだってさ、あたしに」
 さゆみちゃんはきりっとした美人さんでもあるから、二人で歩いているとよくナンパをされていたことを思い出した。でも、中身が男前というか、不思議ちゃんなので、しれっと躱すのが上手だった。
「資料の受け渡しを口実に、あの人はあたしを口説いたんだ」
「…………」
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