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テンプテーション【完結】
第4章 周辺がにぎやかすぎて困ります!
 お昼からは、最初はさゆみちゃんの話が気になっていたけれど、仕事状況が別のことを考えることを許してくれなかったので助かった。
 だけど、どうしてだろう。私の目の前をちらちらとアピールするように中本課長が行ったり来たりしているのだ。正直、鬱陶しい。
 むっとして睨み付けると、中本課長と目が合った。
「東泉くん」
「なんでしょうか」
 思わず、いつも以上に刺々しい態度になってしまったのは、さゆみちゃんにきちんと気持ちを伝えていないことに腹が立っていたから。
「少し打ち合わせをしたいんだが」
「……いいですよ」
 このタイミングで話を振ってきたということは、きっとさゆみちゃん絡みだ。
 公私はきちんと分けてくださいよ、と思ったけれど、少し休憩を挟みたかったのも正直なところだったので、中本課長と一緒に朝も入った応接室へと向かった。
「お昼に森山さんと話をしていたね」
 入るなり中本課長にそう振られたのでさらにむっとしてしまった。
「……見ていたんですか」
「見ていたというか、たまたま通りがかって」
「話は聞いていましたか?」
「ぼそぼそとしか聞こえなかった」
 あの休憩スペースのある場所は、お昼時間はあまり人が通らない。とはいえ、パーティションで区切られているだけの場所だし、内容が内容だったので、声はひそめていた。でも、パーティションの向こうで耳を澄ませていたら、聞こえていたかもしれない。
「ぼそぼそとしか聞こえなかったのに、よく私と森山さんだって分かりましたね」
 そう聞くと、中本課長は明らかに狼狽した。
「のっ、のぞいたらその、君たちがいたのが見えたから」
「まあ、聞かれたのが中本課長なら別にいいんですけどね。中本課長のことで相談を受けていましたし」
 別れ際にしょんぼりとしていたさゆみちゃんを見ていたから、どうしても反撃したくてそんな意地の悪い言い方を思わずしていた。
 中本課長は珍しくしゅんとうなだれていた。
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