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テンプテーション【完結】
第4章 周辺がにぎやかすぎて困ります!
 荷物を置いて、手を洗って着替えていると、貴博さんがキッチンから声を掛けてきた。
「ご飯は炊けてるんだが、おかずはどうしようか悩んで、決められてないんだ」
 ああ、そうか。一人ではないからご飯を適当にっていうわけにはいかないのか。
 一人だとつい手抜きをしてしまいがちで、ご飯と佃煮だけだとか、ひどいときはお茶漬けだけってのもあった。
 私の部屋の冷蔵庫内から荷物が移動してきているのなら、なにかしら食べ物は入っている。今日はとりあえずそれで済ませてしまおう。
 冷蔵庫を開けると、数日前まで空っぽだったのと打って変わって色々と入っていた。
「真白の部屋の冷蔵庫から持ってきたけど、明らかに期限が切れている物は捨てたぞ」
「あ……ありがとうございます」
 試しに買って、一度使ったきりの調味料が入っていたような気がする。使い慣れない調味料ってよほど口に合わない限りは継続して使えないのよねぇ。
「貴博さん、なにか食べたい物はありますか?」
「真白」
「……はい?」
「お帰りのキス、してない」
 貴博さんは私の背後から近寄ってきたと思ったら、腕を取られて冷蔵庫から離され、扉を閉めると私の身体を抱き寄せた。頬を何度か撫でられた後、顎に手を掛けられ、唇が重なる。舌先で唇を舐められたと思ったすぐ後、ぬるりと舌が入り込んできた。
 すっかり貴博さんに慣らされてしまった私は、されるがままに口を開け、貴博さんの舌を迎え入れた。舌を擦り合わされ、絡められ、貴博さんから与えられる甘いキスに身体から力が抜けた。
 すでに部屋着になっている貴博さんのトレーナーを掴むと、さらに身体を引き寄せられた。
 昨日、あんなに貴博さんとしたから今日は身体がだるくて仕方がなかったのに、こうやって熱を加えられると、そんなことも忘れて、身体の奥がくすぶり始めてきたのが分かった。
「このまま真白を食べたい」
 唇を離して少し掠れ気味の声でそんなことを言ってくる貴博さんの色気に当てられてしまったけれど、駄目ですってば!
「や、ちょ……っと、無理ですっ」
 強引にせまられてしまったら流されていたかもしれないけれど、貴博さんは私の拒否の言葉をきちんと受け入れてくれた。
「……我慢する」
 しょんぼりとうなだれているのを見てかわいそうと思ったけれど、駄目ですって!
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