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テンプテーション【完結】
第1章 告白から始まる恋?
     *

 会社の周りには安くて美味しいランチのお店がたくさんあるから、休憩スペースでお昼を食べる人は少ない。
 私もいつもだったら部署の人とだったり同期と食べに出掛けるのだけど、今日はそんな気分になれなくてコンビニ弁当をここに持ち込んだ。
 窓際にパーティションで囲っただけの場所だけど、窓際にそってテーブルが置かれているので外がよく見える。天気がよいと遠くまで眺めることができてなかなかよい場所だったりする。
 今日も天気がよくてまぶしく感じるくらいの外を眺めながらお弁当をつつき、昨日のことを思い出す。
 あのお店もそういえばこんな窓際の席だったなとか、月野木さんとの距離がいつもより近すぎて、彼からの熱を感じたことを思い出して思わず赤くなった。
 目の前にお弁当がなかったらきっと、机に頭を打ち付けていたと思う。
 だって、だってよ? あの月野木さんにプロポーズされたんだよ? にやけるなっていう方が無理でしょ。
 いやでも、昨日の出来事は夢だったのかも。
 だってあんなにもてる人が私にプロポーズだよ? いやん、夢よー! うんうん、夢ってことにしておこう。
 一人なのをいいことに、思わず妄想が暴走していた。
 しかしふと人の気配がしたから私はきりっと表情を引き締め、のんびりとお弁当を楽しんでいる風を装ったのだけど。
「東泉さん、お疲れさま」
「あ……と。き、きききき、昨日はっ」
「もしかしなくても、動揺してる?」
 さっきまで妄想していた相手がいきなり現れたのだ。心臓に悪すぎですよ。
「きょ、きょーって、出勤日でした?」
 月野木さんは休憩スペースに私だけなのを確認すると入ってきて、隣の椅子に腰掛けた。ち、近すぎますって! 心臓が口から飛び出るっ!
「俺の出勤日は月・水・金曜」
 そういえば昨日の食事会の時、『明日、出勤だな』と言ってたのを思い出した。
「そ、そーですか」
 昨日までだったらそつなくできていたやりとりが、どうにも上手くいかない。それもこれも、さっきまで月野木さんのことを考えていたからだ。
「あ、その弁当」
「……はい」
「美味しいよな。安いけどそこそこバランス取れていて」
「ええ、そうなんですよね。たまに食べたくなって」
「俺には量が少ないけど、女性にはちょうど良さそうな量だ」
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