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テンプテーション【完結】
第4章 周辺がにぎやかすぎて困ります!
 私、社内でもって話はまだ貴博さんにしてないんだけど……ってより、目撃者がいるってことは、もっとたくさんの人が二人を見かけている可能性が高いってことよね?
「今度、中本課長にそれとなく言っておくよ」
「はぁ」
 それで仕事がはかどるようになるのなら大歓迎ですけど。
「いやそれより、なんで貴博さんがそんなところにいるんですか」
 ふと気がついて聞くと、貴博さんからはまっとうな答えが返ってきた。
「面談室はちょっと奥まったところにあるだろう? さらに奥にあまり知られていないけど、小さい部屋があるんだよ」
「二人は……?」
「そこを使っていたんだろうね」
 それで探しても見つからないのか!
「さゆみちゃんの話を聞いてると、妙な形でこじれてしまってるみたいでして」
「こじれてる?」
「私たちのところに彼氏ができたってメールが来たけど、あれって相手は中本課長ではないみたいなんですよ」
「はあ?」
 想定外だったようで、貴博さんは変な声を上げていた。
「ところで、二人はいつからそういう関係だったんだ?」
「入社してすぐらしいですよ」
「はああ?」
「ですよねー。驚きますよねぇ」
 貴博さんは少し頭を抱えた後、大きくため息を吐いた。
「なるほど、それで食事会を抜けたのか」
「へ?」
「……実は森山さんが食事会を抜ける前に、森山さんから告白されたんだ」
「さゆみちゃんからそれ、聞きました」
「森山さんの想いは受け入れられなかったけれど、三人で食事会を続けるのは一向に構わないと言ったんだ」
「んー、私がさゆみちゃんの立場だったら、ちょっといたたまれないです」
 いくらさゆみちゃんが変わっているからって、そういうところは人よりも繊細だと思う。
「森山さんの本心は分からないけれど、淡々としたあの口調で『賭に負けたから食事会には参加できない。それがなければなかなか君たちは見ていて面白いから参加したいんだが』って言っていたぞ」
 さゆみちゃん……。面白いってなんですか、面白いって。
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