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テンプテーション【完結】
第5章 幸せの誘惑(完)
 貴博さんがそこまで私のことを求めてくれているのは嬉しいけれど、想っていた時間の長さが違うのだから、いきなりは難しい。
「貴博さんの想いは受け止めました。私も応えられるように努力しますね」
 貴博さんはちょっと不服そうではあったけど、小さなうなずきを返してくれた。
「……あの、自分で言っておいてなんですが」
「うん?」
 貴博さんは私の髪の毛を弄びながら、首を傾げた。
「こういう場合って努力をするような事柄なんでしょうか」
「……どうだろうな? むしろ、一番になるように努力しなければならないのは俺だと思うんだけどな」
「好きになる努力、好きになってもらう努力。……どちらもなんだかおかしいですね」
「まぁ、そうだな。でも、無駄なことではないと思うよ」
 貴博さんと顔を合わせて、くすくすと笑った。
「さて、今日は事務的な話をしないといけないから、先に風呂に入ってきてもらえると助かる」
「はい。では、入ってきます」
 貴博さんに促されて私はお風呂場へ向かった。
 湯船には湯が張られていて、私はゆっくりと浸かることができた。

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