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テンプテーション【完結】
第5章 幸せの誘惑(完)
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 事務的な話というのは、新居のことと結婚式のことだった。
「新居は来月半ばから入居できるそうだ。真白の部屋の解約は入居開始日でいいと思うんだが、どうだろう」
「入居日って、平日ですよね?」
「そうだが、休めない?」
「会社に行かないとスケジュールがはっきりしないので、保留にしてもらっていいですか?」
「分かった」
 とそこで気が付いた。
「貴博さん、この部屋はどうするんですか?」
 貴博さんは何度か瞬きをした。もしかして、忘れていた?
「ここは賃貸にしてしまおうかと思っているんだ」
「……は?」
「ここ、借りてるんじゃないって前に言わなかったか?」
 そう言われて、思い出した。ご両親がここに住むようにと言ってきたと。私たちがこれから住む予定のあのお高い部屋さえ一括で買ってしまうような人たちなのだから、ここも購入したものでも不思議はない。
 一人暮らしだからてっきり賃貸だと思っていたけど、それにしては設備がよすぎるものね。ここは分譲マンションだったのね。
「売ってもいいと言われたけど、どうせなら家賃収入もあると色々と楽だよな?」
 なんというか、世界が違いすぎます。
「オマカセシマス」
 すでにキャパオーバーだったので貴博さんに任せることにしたのだけど、さらに爆弾発言をしてくださいました。
「今度の土曜日、真白の両親と顔合わせのセッティングをしたから」
「えええっ」
 貴博さんに実家の連絡先を聞かれたから教えたけど、それってここに繋がっていたのっ?
「結婚式はうちが全面的に資金を出すと言ってるよ」
「ええっ、でもっ!」
「親父がやる気になってるから、止めるっていうのは無理だと思うよ」
 どういうことですか、これは。
「なんでそんな話に……」
 結婚式は懲りたという話を聞いていたからやらないとばかり思っていたのに。
「親父曰く、病院の体裁とか言い訳を口にしていたけど、本音は真白のウエディングドレス姿を見たいんだってさ」
 どこをどう気に入られたのでしょうか、私……。
「俺も真白のウエディングドレス姿を見たいな」
「う……」
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