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テンプテーション【完結】
第5章 幸せの誘惑(完)
*
仕事の合間をぬって、部屋の解約手続きをしたり、雑多な事務手続きをしたりとばたばたしていたら、あっという間に一週間が過ぎた。
そして土曜日。
貴博さんのご両親が披露宴会場にしようとしている場所で顔合わせをするという。これが終わったら、担当者との打ち合わせが待っている。なかなかに忙しい。
貴博さんに連れて来られた会場を見て、思わず歓声を上げていた。
情けないことにあまりにも語彙が貧困で素晴らしさをきっちり伝えられないのが残念だけど、とにかくすごく綺麗でとっても素敵! の一言につきる。
貴博さんのご両親が見つけてきたというこの会場は、都会のど真ん中だというのに喧噪を全く感じさせない静かな場所で、瀟洒な建物と芝生が美しい広い庭園を持っていて、贅沢すぎてくらくらする。
季節的に紅葉しているのもまた美しく、芝は冬支度を始めているために少し色が褪めていたけれど、それでも手入れがされているから美しくて、ここだとさぞ和装が合うだろうなあ……と思わず想像していた。
とそこでふと気がついた。
私が和装ということは、貴博さんは紋付き袴ってこと?
貴博さんの着ている姿を想像して、急にどきどきと動悸が速くなってきたのが分かった。
すごい、素敵すぎるかも……!
想像して内心で喜んでいると、貴博さんが真横に立った。左に顔を向けて見上げると、視線が合った。
「いいだろ、ここ」
「はい、素敵すぎて目眩がします」
「目眩がする? それは大変だ、どこかで横にさせてもらおう」
と貴博さんは口にしたけれど、口元がニヤケていたから冗談で言っているのが分かった。
「もう! 大丈夫ですって」
「そういう口実で誘っているのかと思った」
「そんなことないですっ!」
からかっているのが分かったけど、顔が赤くなるのは止められなかった。
恥ずかしくて貴博さんから視線をそらして俯いていると、上から声が降ってきた。
「そんなに恥ずかしがらなくても」
「恥ずかしいに決まってるじゃないですか!」
隣に立っている貴博さんを軽く小突くと、笑われた。
「そうやってじゃれてこられると、猫みたいだ」
「うー」
唇を尖らせていると、素早く貴博さんの顔が近づいたと思ったらかすめるようなキスをされた。
「もうっ!」
仕事の合間をぬって、部屋の解約手続きをしたり、雑多な事務手続きをしたりとばたばたしていたら、あっという間に一週間が過ぎた。
そして土曜日。
貴博さんのご両親が披露宴会場にしようとしている場所で顔合わせをするという。これが終わったら、担当者との打ち合わせが待っている。なかなかに忙しい。
貴博さんに連れて来られた会場を見て、思わず歓声を上げていた。
情けないことにあまりにも語彙が貧困で素晴らしさをきっちり伝えられないのが残念だけど、とにかくすごく綺麗でとっても素敵! の一言につきる。
貴博さんのご両親が見つけてきたというこの会場は、都会のど真ん中だというのに喧噪を全く感じさせない静かな場所で、瀟洒な建物と芝生が美しい広い庭園を持っていて、贅沢すぎてくらくらする。
季節的に紅葉しているのもまた美しく、芝は冬支度を始めているために少し色が褪めていたけれど、それでも手入れがされているから美しくて、ここだとさぞ和装が合うだろうなあ……と思わず想像していた。
とそこでふと気がついた。
私が和装ということは、貴博さんは紋付き袴ってこと?
貴博さんの着ている姿を想像して、急にどきどきと動悸が速くなってきたのが分かった。
すごい、素敵すぎるかも……!
想像して内心で喜んでいると、貴博さんが真横に立った。左に顔を向けて見上げると、視線が合った。
「いいだろ、ここ」
「はい、素敵すぎて目眩がします」
「目眩がする? それは大変だ、どこかで横にさせてもらおう」
と貴博さんは口にしたけれど、口元がニヤケていたから冗談で言っているのが分かった。
「もう! 大丈夫ですって」
「そういう口実で誘っているのかと思った」
「そんなことないですっ!」
からかっているのが分かったけど、顔が赤くなるのは止められなかった。
恥ずかしくて貴博さんから視線をそらして俯いていると、上から声が降ってきた。
「そんなに恥ずかしがらなくても」
「恥ずかしいに決まってるじゃないですか!」
隣に立っている貴博さんを軽く小突くと、笑われた。
「そうやってじゃれてこられると、猫みたいだ」
「うー」
唇を尖らせていると、素早く貴博さんの顔が近づいたと思ったらかすめるようなキスをされた。
「もうっ!」