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テンプテーション【完結】
第1章 告白から始まる恋?
 昨日とは違い、今日は多少の残業はあったけれど、問題なく終わった。思わずほっとため息を吐く。
 帰るために片付けをしていたら、またもやどこかに行っていた中本課長が戻ってきた。
「お疲れさまです」
「ああ、お疲れさま。これから帰り?」
「はい」
「それじゃあ、飲みに行かないかい?」
 突然の誘いにしばしの間、固まったけれど、月野木さんとの約束があるから、それを理由に断ることにした。
「先約がありますから」
「そうか、残念だ」
 本当に残念に思っているのかどうか分からない声音で言われ、この人はなんのために声をかけてきたのか悩んでしまった。
 中本課長はなにを考えているのか読めなくて、どうにも苦手だ。今日は月野木さんと約束をしていて良かった。それにしても、なんでお昼と夜とこの人は食事を誘ってくるのだろう。
「それでは、お先に失礼します」
 私は中本課長に挨拶をして、部屋を出た。

 会社を出てスマホを見ると、三十分ほど前に月野木さんからメッセージが届いていた。
《相談が長くなって遅くなりました。
 もしも先に上がっていたら、今日の飲みはまた後日にしましょう》
 あれ? どういうこと? と少し悩んだけど、とりあえず返事をしよう。
《お返事が遅れてすみません。
 今、仕事が終わりました。
 月野木さんはまだお仕事中ですか》
 月野木さんから、すぐに返事が来た。
《俺も先ほど終わったばかりです。
 まだ社内ですか?》
 月野木さんがこんな時間まで社内にいるのって珍しいような気がする。
《今、会社を出たところです》
《分かりました。
 すぐに追いかけますので、先に駅に向かってください》
 私は月野木さんのメッセージに従い、駅に向かって歩き始めた。
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