この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
テンプテーション【完結】
第1章 告白から始まる恋?
少し前まで会社から出たら汗が噴き出していたのに、今はすっかり心地よい季節になっていた。
今週はそこそこ忙しかったけど、ぐったりするほどではないから週末は久しぶりに実家に顔出しでもしてこようかな。
そんなことを思いながら歩いていると、後ろから人が近づいてくる気配がしたので振り返ったら、月野木さんだった。
「お疲れさま」
「お疲れさまです。月野木さん、この時間まで社内にいるの、珍しくないですか」
私の質問に月野木さんはうなずきを返してきた。
私たちは並んで駅までの道を歩いた。
「中本課長から相談を受けてました」
「中本課長から……」
相談内容が気になったけれど、聞いてはいけないことだと思うし、聞いたとしても月野木さんは答えてくれないだろう。
そんな私の葛藤を知ってか、月野木さんは妙な質問をしてきた。
「中本課長のことでなにか困っていませんか」
困ること?
「そうですね……。困っているのは仕事をしてくれないことですね」
「それだけですか?」
「はい。今日も仕事をしないで別の部署に行ってましたから。まあ、それも仕事なのかもしれませんけど、書類仕事を嫌うのをどうにかしてほしいですね」
と思わず愚痴を口にして、はっとした。またもや告げ口したみたいな形になってしまった。
「それも困りましたね」
「そうなんですよ」
と言ったものの、なんだかいたたまれない気持ちになったので、別の話を振ってみる。
「ところで、月野木さん。お店はどこかあてがありますか?」
月野木さんは私の質問に何度か瞬きをした後、照れくさそうな笑みを浮かべた。たまに見かける表情だった。
「すみません、仕事モードから抜け切れてませんでした」
私にも経験があったので思わずくすりと笑った。
「どうにも切り替えが下手でして……すみません」
そういって恐縮する月野木さんは初めて見た。
「それで、お店なんですが、たまたま昨日行ったところがまた取れたんですよ。なので誘ってみました」
「わあ、ほんとですか? 嬉しい!」
料理も美味しかったけど、お酒がとにかく美味しかったのだ。また飲みたいと思っていたけど、こんなに早く飲めると思っていなかったのでとても嬉しい。
「キャンセルが入ったみたいなんです」
「タイミング、いいですね」
「はい。それもきっと、東泉さんの普段の行いが良いからですね」
「……もうっ」
今週はそこそこ忙しかったけど、ぐったりするほどではないから週末は久しぶりに実家に顔出しでもしてこようかな。
そんなことを思いながら歩いていると、後ろから人が近づいてくる気配がしたので振り返ったら、月野木さんだった。
「お疲れさま」
「お疲れさまです。月野木さん、この時間まで社内にいるの、珍しくないですか」
私の質問に月野木さんはうなずきを返してきた。
私たちは並んで駅までの道を歩いた。
「中本課長から相談を受けてました」
「中本課長から……」
相談内容が気になったけれど、聞いてはいけないことだと思うし、聞いたとしても月野木さんは答えてくれないだろう。
そんな私の葛藤を知ってか、月野木さんは妙な質問をしてきた。
「中本課長のことでなにか困っていませんか」
困ること?
「そうですね……。困っているのは仕事をしてくれないことですね」
「それだけですか?」
「はい。今日も仕事をしないで別の部署に行ってましたから。まあ、それも仕事なのかもしれませんけど、書類仕事を嫌うのをどうにかしてほしいですね」
と思わず愚痴を口にして、はっとした。またもや告げ口したみたいな形になってしまった。
「それも困りましたね」
「そうなんですよ」
と言ったものの、なんだかいたたまれない気持ちになったので、別の話を振ってみる。
「ところで、月野木さん。お店はどこかあてがありますか?」
月野木さんは私の質問に何度か瞬きをした後、照れくさそうな笑みを浮かべた。たまに見かける表情だった。
「すみません、仕事モードから抜け切れてませんでした」
私にも経験があったので思わずくすりと笑った。
「どうにも切り替えが下手でして……すみません」
そういって恐縮する月野木さんは初めて見た。
「それで、お店なんですが、たまたま昨日行ったところがまた取れたんですよ。なので誘ってみました」
「わあ、ほんとですか? 嬉しい!」
料理も美味しかったけど、お酒がとにかく美味しかったのだ。また飲みたいと思っていたけど、こんなに早く飲めると思っていなかったのでとても嬉しい。
「キャンセルが入ったみたいなんです」
「タイミング、いいですね」
「はい。それもきっと、東泉さんの普段の行いが良いからですね」
「……もうっ」