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テンプテーション【完結】
第5章 幸せの誘惑(完)
 思っていたより貴博さんは子どもの頃、やんちゃだったのか。
 ……そうだよね、ほんと、犬みたいな性格だもん。叱られてしゅんとしている姿を想像して、ちょっと笑ってしまった。
「そういえば貴博さんの子どもの頃の写真って見たことがないです」
「それは俺もだな。……そうだ」
「な、なんですか」
「結婚式で、お互いの生まれた頃から今までの生い立ちを並べてスライドショー」
「却下します! なんでそんな恥ずかしいことをしないといけないんですか!」
「えー、駄目か? 前に行った結婚式でやっているのがいたぞ」
「みなさんに披露できるような子ども時代ではないですから、それは嫌です!」
「そうなのか、俺は見たいけどな」
「それなら、貴博さんにだけ見せてあげます」
「……よし、来週は真白の実家に行って見せてもらおう」
「見せるのはいいですけど、私は貴博さんの子どもの頃の写真、見たいです」
「それなら、これから行くか?」
 相変わらず唐突というか、それでいいのですか?
「ここでいちゃいちゃも楽しいけれど、真白が見たいというのなら、いくらでも見せてやる」
 そういうと貴博さんは私が持っていた洗面器とタオルを奪い、濡らして泡立てて、私の身体を優しく洗い始めた。
「あっ、背中だけって言ったのに!」
「やったもんが勝ちだからな」
「もー!」
 あれだけ恥ずかしかったのに、じゃれるようにして洗い始めたらそれがなくなったので助かった。貴博さんは私を洗った後、自分の身体を洗い始めたのでタオルを奪い、背中だけ洗ってあげた。他も洗ってもよかったんだけど、遅くなりそうだったからやめておいた。それに、引き締まった胸元や腰回りを洗うのはともかく、その下って、かなりハードルが高いのだ。
 髪の毛も丁寧に洗ってくれて、貴博さんが自分の髪の毛を洗っている間に私はもう一度、湯舟に浸かった。
 先ほどは二人で入っていたから満タンだったけれど、一人だとさすがに少なくなっていたけれど、半身浴みたいだった。
 貴博さんが洗い終わったタイミングで私は湯舟を抜けて、先に脱衣所へ出て、身体を拭いた。
 お昼からお風呂なんて贅沢だなと思う。
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