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テンプテーション【完結】
第5章 幸せの誘惑(完)
 貴博さんと共に二階に上がり、アルバムを見せてもらった。
 小さい頃から顔が整っていて、明らかにいい男ってのが分かってびっくりした。しかも面影がものすごくある。
「これは……小学生の頃だな」
 ぱらぱらとめくって見ていると、後ろから覗いてきた貴博さんの解説が入った。
 学校で撮られたものらしく、教室内で貴博さんが真ん中で、周りはみんな、女の子だった。この頃からモテていたんだなというのがよく分かる。
 だけど、女の子たちと写っているのはこの一枚だった。後は男の子たちと写っているものばかり。女の子と写っているのは、集合写真のみ。
 それ以外は貴博さん一人だったり、たぶんお兄さんとだったりだった。
 次々出てくるアルバムを見ているけど、さっきの一枚以外は見事なまでに女の子と一緒には写ってなかった。ここまで徹底していると、なにかあったのかと勘ぐりたくなる。
「貴博さん」
「ん?」
 貴博さんはアルバムを見ている私を後ろから抱きしめながら、同じように写真を見ていた。
「ひとつ、気になったんですが」
「ん?」
「女の子と写ってる写真がないですね」
「あー……、気が付いたか」
「?」
 不思議に思ってアルバムを棚に置いて、貴博さんの腕の中で回転する。そうすると腰を抱き寄せられた。
 貴博さんの肩の辺りに顔が押しつけられ、ちょっと苦しい。
「さっき見ていた写真があっただろう?」
「女の子たくさんと写ってたの?」
「そう。あれは授業中に先生が撮ったんだけど、撮った後、他の女の子も一緒に撮りたい! となって、ちょっとした騒動になったんだよ」
 どういう状況下だったのか分からないけど、騒動ってなに?
「進級前で、先生は思い出にって仲のいいグループ単位で撮ってくれたんだ。そこまではよかったんだけど、俺は特に仲のよかった男と撮ってもらおうと思っていたのに、強引な子に無理矢理こうやって組まされて撮られたんだよ。そうしたら次から次へと他の女の子が一緒に撮りたいといって、けんかになった」
「…………」
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