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テンプテーション【完結】
第5章 幸せの誘惑(完)
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 週が開けると引っ越しに向けての準備に時間をとられるようになり、意外に忙しい日々を過ごしてきた。
 部屋の契約の件で早く解約したいと不動産屋に連絡を入れると、早く撤去してもらえると助かると言われ、ばたばたと土曜日に出ることとなった。
 平日は仕事が終わったら貴博さんの部屋に戻って夕飯を食べた後、私の部屋へ行き、少しずつ梱包していく。貴博さんの部屋に運べるものは持ち帰り、処分するものをまとめたりした。
 少しずつ片づいて行く部屋を見ていると、新生活のためとはいえ、なんとなく淋しくなる。
 だけど貴博さんがそばにいてくれたから、絶えきれないほどの淋しさではなかった。あとは忙しいのもあって、それが助かった。
 荷物がすべてまとまったのは、金曜日だった。明日は朝早くから搬出がある。
「ありがとうございました」
「手伝うのは当たり前だろう?」
 というけれど、日中の動けない時間帯に家電の処分などをお願いしたから、私より大変だったと思う。
「……私、貴博さんに頼ってばかりです」
「そんなの、当たり前だろう? むしろ、頼ってもらえないのは困るし、なによりも悲しい」
 そう言ってもらえるから救われるけど、なんだか最近は人任せでいたたまれない。
「俺は真白に後ろめたさを持ってもらうために結婚した訳じゃない。真白はいつも頑張っていたし、少しでも助けになれればと思ったから、結婚を申し出たんだ」
「……はい」
「もっと甘えて欲しいんだけど」
「今でも充分、甘えてますよ?」
「もっと甘えて?」
 と色気をたっぷり含んだ流し目で小さく首を傾げられたりなんてしたら、私はどう反応すればいいのでしょうか。
「俺の幸せは、真白が俺の横で笑ってることだから」
「今でも充分、幸せですよ?」
「ここのところずっと、淋しそうな顔をしていたけど?」
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