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テンプテーション【完結】
第1章 告白から始まる恋?
 『普段の行いが良いから』というのは私がよく口にする言葉だ。それを知っていて月野木さんは少しからかうように口にした。
「でもほんと、あそこのお店はなかなか予約が取れないんですよ」
「そんな気がしました」
 あれだけムードがあるお店なんですもの。隣り合わせの席で中庭を見ながらなんて、そりゃあ月野木さんもプロポーズしたくなるわよね。
 とそこで昨日のことを思い出して急に恥ずかしくなった。
 他人事のように考えていたけど、されたのは私じゃない!
 あまりの恥ずかしさに意識の外に追い出しすぎて忘れていたけど、どうするのっ?
 脳内でパニックに陥っているうちにお店に着き、席に案内された。昨日と同じく、月野木さんが注文してくれた。
「さて、東泉さん」
 お通しと注文した枡酒が来たところで、月野木さんは身体を斜めにして私の顔をじっとのぞき込んできた。
 私はお通しとして出された大根の煮物に意識が奪われていたので、反応が遅れてしまった。驚いてお通しから視線を外すと、月野木さんに笑われた。
「相変わらず油断しているというか、隙だらけというか」
 肩を揺らしてまで笑うことないのにと頬を膨らませると、月野木さんはさらに笑った。
 さっきも月野木さんにプロポーズされたことを思い出して内心でわたわたしていたのに、目の前に美味しそうな食べ物があったらそちらに気を取られるなんて、色気より食い気ってどうなの。
「真白は俺の前で油断しすぎだと思うよ」
 そういうと月野木さんは顔を近づけてきた。動くことが出来なくて固まっていると、頬になにか温かなものが一瞬触れ、すぐに離れた。
「ほら」
「────っな」
「いきなり唇にキスするのはさすがにまずいかなと思って」
 目を見開いていると、月野木さんは楽しそうに笑った。ちょっと居心地が悪い。
「いろいろと混乱していると思うから、質問タイムをとりますよ」
 どうやら今日のお誘いは、私の疑問に答えるという形でアピールをするつもりのようだ。
「五年前からって」
「そこから聞いてくるんですね」
「だって!」
「研修の時、ロールプレイで三人一組になるように言われたとき」
「……え?」
「森山さんがひとり、残りましたよね」
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