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テンプテーション【完結】
第1章 告白から始まる恋?
     *

 月野木さんが私を意識したのが想定していたよりも早かったことにも驚いたけど、私にしてみれば当たり前だった出来事に注目した人がいたことに戸惑った。
「さゆみちゃんはちょっと変わっているけど、みんなが嫌がるようなことはしない子だよ?」
「マイペースすぎるのと、独自の世界に生きてるのが周りから疎まれる理由のような気がする」
「それ、さゆみちゃんに」
「言ったよ」
 当たり前のように言う月野木さんは仕事にまっすぐ向き合っているなと感心した。
「もしかして、それが原因で食事会から抜けるって言ったの?」
「いや。俺が指摘するまでもなく、本人も分かってるみたいだったよ」
「そうなんだぁ」
「理由を知りたい?」
「……ちょっとだけ」
 と言ったけれど、月野木さんはきっと教えてくれない。
「真白が知らないってことは、森山さんは理由を言いたくないんだと思うから俺からは言えないな」
 やっぱり月野木さんはさゆみちゃんが食事会から抜けた理由を知っているのか。私だけが理由を知らないのはなんだか仲間外れにされた気分だ。
 そんな私の内心は分かっているのか、月野木さんは話題を変えた。
「決定的だったのは、<事件>だな」
「う……」
 やっぱりあれは同期内では外せない出来事なんだろうなあ。
「見ていて爽快だったな」
「あれは……恥ずかしいので忘れてください」
 間違ったことをしたとは思っていないけれど、それでも改めてこうやって言われるととても恥ずかしい。
「大人なのに仲間外れにするなんて信じられない! って」
「だって、私たち新人みんなでって言ったのに、ひとりだけ外すなんておかしいじゃない」
「まあ、そうだな。でも、正面切って普通は言わないよ」
 そう言って月野木さんは枡酒をあおった。昨日は無言で食事をしていたけれど、今日は食事をしながら話している。
「真白もまた同じのを頼む?」
 気がつけば私の飲んでいた枡酒も空になっていた。
「とはいえ、そろそろやめにしておいた方がよさそうだな」
 と止められたけど、私はまだ飲みたかった。
「せめてもう一杯……!」
「じゃあ、ラスト」
 月野木さんは飲み物を頼んでくれて、話を続けた。
「それで」
「うん?」
「食事会を始めるきっかけになったあの三人での飲みは、偶然だったの?」
「いや、偶然じゃない。真白に近づきたくて利用させてもらった」
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