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テンプテーション【完結】
第1章 告白から始まる恋?
黒い短髪に黒縁眼鏡。グレイのスーツを颯爽と着こなしている男性。こうして見ると、周りがイケメンと騒ぐのも分かる気がする。
鋭い視線でなにかを探しているように見えたけれど、私を見つけると大きく手を振ってきた。
「東泉さんっ!」
見た目と違わぬ爽やかな声で名前を呼ばれたので、同じように手を振って応えた。すると目尻が下がり、急に鋭さが消えるのだから不思議だ。
「そろそろかと思って迎えに出てきました」
こういう気の利くところも人気の秘密かもしれない。
「お店の場所が分からないからメッセージをしようと思っていたところだったんです。ありがとうございます」
お礼を述べると月野木さんは照れくさそうに笑った。
月野木さんを見てると、昔、実家で飼っていた犬を思い出してしまう。普段は玄関先でだらりと寝転がっているだけなのだけど、帰ってきた家族の足音が聞こえた途端、むくりと起きあがって、しっぽを振って座って待っているのだ。かわいかったなあ……。
「東泉さん?」
「あ……ごめんなさい」
思い出に浸っているうちに月野木さんは私の目の前に立っていた。月野木さんは身長が高いから、隣に立たれると見上げなければならない。
顔を上げると視線が合って、にっこりと微笑まれた。私もつられて笑い返す。
「お待たせしてごめんなさい」
「大丈夫ですよ。ただ、待ってる間に少し飲んでましたけど」
「なにを飲んでいたんですか?」
「日本酒を少し。月見酒としゃれ込んでみました」
「あぁ、それで月が綺麗ですって」
「そうなんです」
そう言って月野木さんはさりげなく私の荷物を手に取り、半歩前を歩き始めた。私はその後ろをついて行く。
「とても風情のあるお店なんですよ」
そういって笑った月野木さんはとても嬉しそうで、彼には失礼かもしれないけれど、犬みたいだなと改めて思って、笑顔を返した。
鋭い視線でなにかを探しているように見えたけれど、私を見つけると大きく手を振ってきた。
「東泉さんっ!」
見た目と違わぬ爽やかな声で名前を呼ばれたので、同じように手を振って応えた。すると目尻が下がり、急に鋭さが消えるのだから不思議だ。
「そろそろかと思って迎えに出てきました」
こういう気の利くところも人気の秘密かもしれない。
「お店の場所が分からないからメッセージをしようと思っていたところだったんです。ありがとうございます」
お礼を述べると月野木さんは照れくさそうに笑った。
月野木さんを見てると、昔、実家で飼っていた犬を思い出してしまう。普段は玄関先でだらりと寝転がっているだけなのだけど、帰ってきた家族の足音が聞こえた途端、むくりと起きあがって、しっぽを振って座って待っているのだ。かわいかったなあ……。
「東泉さん?」
「あ……ごめんなさい」
思い出に浸っているうちに月野木さんは私の目の前に立っていた。月野木さんは身長が高いから、隣に立たれると見上げなければならない。
顔を上げると視線が合って、にっこりと微笑まれた。私もつられて笑い返す。
「お待たせしてごめんなさい」
「大丈夫ですよ。ただ、待ってる間に少し飲んでましたけど」
「なにを飲んでいたんですか?」
「日本酒を少し。月見酒としゃれ込んでみました」
「あぁ、それで月が綺麗ですって」
「そうなんです」
そう言って月野木さんはさりげなく私の荷物を手に取り、半歩前を歩き始めた。私はその後ろをついて行く。
「とても風情のあるお店なんですよ」
そういって笑った月野木さんはとても嬉しそうで、彼には失礼かもしれないけれど、犬みたいだなと改めて思って、笑顔を返した。