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テンプテーション【完結】
第1章 告白から始まる恋?
     *

 私と月野木貴博の関係を端的に言うと、同期である。
 といっても彼は産業医で、私とはちょっと事情が違う。ただ、雇用されたタイミングが私と一緒で、新人研修も一緒に受けた仲であるから私が勝手に同期だと思っているだけだ。
 最初、産業医ってなにと思ったけれど、平たく言えば従業員のための保健室の先生的な人たちだ。うちの会社には彼の他に後二人、産業医がいる。
 ……というのはまあいいとして。
 彼との出会いは、新人研修でだった。
 私の彼に対する第一印象は悪くはなかったはずだけど、たぶん、周りの女子が騒いでいなかったら特に覚えてもなかったと思う程度に薄いものだった。
 一方の私はというと、特に目立つようなことをした覚えもなかったし、普通にこなしていたと思う。研修の最後の打ち上げ飲み会前のとある<事件>がきっかけで、月野木さんとは仲良くなった。
 それ以来、この月に一度の食事会が行われていた。
 最初は月野木さんと私、そして森山さゆみちゃんの三人だったのだけど、食事会を始めて一年過ぎた辺りでさゆみちゃんは理由を告げずに離脱した。さゆみちゃんとは今も交流があるけれど、未だにこのときの理由は聞けていない。
 その時点で食事会を辞めてもよかったんだけど、どちらかに好きな人ができるまでは続けようと月野木さんに言われ、現在に至っている。
 続いているってことは……ええ、その通りです。自慢ではないけれど私、生まれてこの方、彼氏なんていたことありません。
 今は仕事が楽しくて、彼氏なんて作っている余裕がないというか、仕事が恋人みたいなものだからいいのよ。
 決して強がりではないのよ。今はほんと、仕事が楽しいから仕事に集中したい。
 そんなことをさゆみちゃんに言ったら、枯れてるわねぇと呆れられたけど、月野木さんからは『好きなことに打ち込めるのは素敵です』と微妙なコメントが返ってきた。どう受け止めればいいのか未だに悩んでいたりする一言だ。
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