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テンプテーション【完結】
第1章 告白から始まる恋?
     *

 部屋に帰ってくると、狭いけれど見慣れた空間にホッとした。
 月野木さんの部屋にいると、妙にそわそわして落ち着かない気持ちだったのがそれでよく分かった。
 月野木さんの側にいると、落ち着くんだけど、落ち着かない。
 腕の中の温もりを思い出して、恥ずかしくて思わず床をごろごろと転がった。
「いてっ」
 狭い部屋で暴れたら、当然、なにかに当たるのは当たり前。帰ってきて適当に投げていたバッグに当たったことでそういえばと起き上がり、財布を出した。
 月野木さんは払ったと言っていたけれど、やっぱり覚えがない。いくらだったのか分からないから、財布を開けて確認しようと見たのだが。
「……減ってないじゃん」
 お昼にコンビニで買い物をしたときに入っていたお札の枚数と今の枚数、完全に一致してます!
「月野木さんの嘘つき!」
 私はスマホを取り出して、月野木さんにメッセージをした。
《送ってくださり、ありがとうございます。
ところで、昨日のお代を払いますから、金額を教えてください!》
 もー、なんで嘘つくのかなあ。
 タクシーで帰ってきたと思うけど、それだって負担してもらったし。
《お代はしっかりもらった》
《嘘つき!》
《嘘はついてない》
《だってお財布の中のお金、減ってない!》
《お金では得られないものをしっかりもらった》
 なによ、それ。意味が分からない。
 なんて返そうかと考えていたら、月野木さんからとんでもないメッセージが届いた。
《今度の金曜日、うちに泊まりがけで来ないか》
「……はあ?」
 なんで急にこんなに積極的なの?
《昨日のは俺から誘ったから俺が払うのは当たり前だ。
それが気になるのなら、俺の要求を飲め》
 なんで急に俺さまなの?
《……なんにもしません?》
《されたいのならするけど?》
「いやいや! 冗談じゃないわよ!」
《うち飲みの方が気楽だからやってみたかったんだ》
 うーん……。なんて悩ましい。
《考えておきます》
 泊まりがけでというのがとても気になるんだけど、うち飲みは魅力だ。
 それに、食事代は割り勘でというルールが破られてしまったのが気になる。
 この様子だとお金を渡しても返されるだろうから、それなら素直に従おう。
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