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テンプテーション【完結】
第1章 告白から始まる恋?
 月野木さんについて行くと、風情のある石畳の路地が見えた。道の左右には温かな黄色味を帯びた足下灯が等間隔に置かれていて、幻想的だった。
「東泉さん、ここです」
「わぁ、素敵です」
 私たちは並んで路地を通り、お店の玄関へ。ここもとても素敵で、格子戸を開けると、檜の匂いを含んだ温かな空気が頬を撫でていった。
 なんだかほっとする空間の奥から、絣の着物を着た女性が現れた。
「お帰りなさいませ。お連れさま、いらっしゃいませ」
「こんばんは。遅れて申し訳ないです、お世話になります」
 頭を下げると、女性はゆるゆると頭を振った。
「お時間はまだ充分にございますので、大丈夫ですよ。ごゆっくりおくつろぎくださいませ」
 そうして私たちは部屋に案内された。
 磨り硝子のはまった格子戸をくぐると、薄暗い部屋の個室だったけれど、落ち着けそうな空間になっていた。
 先に入るように月野木さんに促されて部屋へ。少し狭い感じはしたけれど、そんなに圧迫感はなかった。
 横に長い座椅子が壁に向かって置かれていて、その前にはカウンターのように細長いテーブル。
 椅子に座ると、足下が空いていて掘りごたつみたいになっていてちょっと驚いた。
「驚きますよね」
「そ、そうですね」
「俺も最初に座ったときに驚きましたから」
 驚いている月野木さんを見られなかったのはちょっと残念だったなと思ったけれど、なんとなく想像がついたからくすりと笑った。

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