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テンプテーション【完結】
第2章 自覚する想い
     *

 貴博さんと手を繋いで、真夜中の町を歩く。
 空を見上げると星が瞬いていた。
「こんな遅くに帰るときがたまにありますけど」
「……うん」
「空を見る余裕なんてなかったから、こんなに星が見えるのを初めて知りました」
 飲んで帰った後は、酔っぱらっているのもあってそんな余裕なんてない。残業帰りは疲れ切っているし、しかも夜も遅いから、ちょっと怖いのもある。
「ここをひとりで歩いて帰るのか?」
「うん。駅前でタクシーをつかまえるほどでもないから」
 それに、駅からのこの距離は酔いを醒ますのにちょうど良いのだ。遅くなってもそこそこ人通りもあるから思うほど危なくない。
「危ないから、今日からは遅くなったら俺んちね」
「は?」
「二十二時以降の帰宅は禁止。どうしても遅くなるときは俺の部屋に来ること」
「なんで」
「俺が心配だから」
 過保護な貴博さんにちょっと呆れてしまった。
「なぁ、真白」
「……はい」
 まだなにかあるのかと思ったら、思いも寄らなかったことを言われた。
「そっちに泊まっていい?」
「……え?」
 泊まるってどういうことですか。
「うん、それがいい。そうしよう」
 どうやら思いつきで口にしたようだったけれど、貴博さんの中では決定事項となってしまったようだ。まだ私、いいと言ってないのに。
 とはいえ、私も離れ難かったので、特に拒否はしなかった。
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