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テンプテーション【完結】
第2章 自覚する想い
*
私の実家は私たちが住んでいる場所からかなり奥へと向かわなくてはならない。
社会人になった当初は実家から通っていたのだけど、通勤時間の長さと電車の混雑に根を上げ、夏のボーナスが入った時に一人暮らしをすることにした。
そのときに初めて両親から反対をされたけれど、通勤の大変さを切々と訴えると、父はすぐに理解してくれた。
私の実家に向かうには電車一本で行けるのだけど、乗っている時間が長く、それでいて通勤時は座ることができないどころか、ぎゅうぎゅう過ぎて身動きも取れない。
そんな電車は今日は休みの日というのもあって少し余裕はあるけれど、それでも座ることができなかった。私たちは比較的空いている車両の端の連結部分に近い場所に並んで立っていた。
「そういえば真白は入社してしばらく、実家から会社に通っていたんだよな」
「はい。通勤が大変で、それが嫌で一人暮らしを始めました」
「俺とは反対だな」
「え……?」
そういえば、あんまり深く考えていなかったけれど、どうして貴博さん、一人暮らしをしているのだろう。
「実家からの方が通勤は楽なんだよな」
「そう……ですよね」
貴博さんの実家が経営している病院ってのは、駅から少し離れているけれど、会社からはとても近い。といっても住居が病院ではないから通うことになるけれど、それでも病院と実家は目と鼻の先だったはず。
「上二人が結婚して、手狭になったからって追い出された」
「そうだったんですね」
ということは、二人のお兄さんの奥さんたちは同居しているってことか。
「一番上の兄が母屋で、二番目の兄が俺が使っていた離れを使っているんだ」
「実家住まいの時、一人で離れを使っていたんですか」
「一人でというか、祖母と一緒に。祖母が亡くなってからは一人だったな」
貴博さんのためというより、お祖母さんのための離れだったということか。
「今の部屋も親がいきなりぽんっと決めてきて、ここに住めってさ」
それはそれでなんだかすごい話だ。
「実は真白のことは両親にすでに話してあるんだ」
「……え」
「早く連れて来いって言ってるくらいだから、さっきの話は心配ない」
私の実家は私たちが住んでいる場所からかなり奥へと向かわなくてはならない。
社会人になった当初は実家から通っていたのだけど、通勤時間の長さと電車の混雑に根を上げ、夏のボーナスが入った時に一人暮らしをすることにした。
そのときに初めて両親から反対をされたけれど、通勤の大変さを切々と訴えると、父はすぐに理解してくれた。
私の実家に向かうには電車一本で行けるのだけど、乗っている時間が長く、それでいて通勤時は座ることができないどころか、ぎゅうぎゅう過ぎて身動きも取れない。
そんな電車は今日は休みの日というのもあって少し余裕はあるけれど、それでも座ることができなかった。私たちは比較的空いている車両の端の連結部分に近い場所に並んで立っていた。
「そういえば真白は入社してしばらく、実家から会社に通っていたんだよな」
「はい。通勤が大変で、それが嫌で一人暮らしを始めました」
「俺とは反対だな」
「え……?」
そういえば、あんまり深く考えていなかったけれど、どうして貴博さん、一人暮らしをしているのだろう。
「実家からの方が通勤は楽なんだよな」
「そう……ですよね」
貴博さんの実家が経営している病院ってのは、駅から少し離れているけれど、会社からはとても近い。といっても住居が病院ではないから通うことになるけれど、それでも病院と実家は目と鼻の先だったはず。
「上二人が結婚して、手狭になったからって追い出された」
「そうだったんですね」
ということは、二人のお兄さんの奥さんたちは同居しているってことか。
「一番上の兄が母屋で、二番目の兄が俺が使っていた離れを使っているんだ」
「実家住まいの時、一人で離れを使っていたんですか」
「一人でというか、祖母と一緒に。祖母が亡くなってからは一人だったな」
貴博さんのためというより、お祖母さんのための離れだったということか。
「今の部屋も親がいきなりぽんっと決めてきて、ここに住めってさ」
それはそれでなんだかすごい話だ。
「実は真白のことは両親にすでに話してあるんだ」
「……え」
「早く連れて来いって言ってるくらいだから、さっきの話は心配ない」