この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
テンプテーション【完結】
第2章 自覚する想い
「話をしているって……いつからですか」
「んー、五年前からだな」
いやだから、どうして五年前っ?
「早く所帯を持つように言われて、見合いをさせられそうになったんだ。そんなの、まっぴらごめんだったから、好きな人がいるから見合いはしないって伝えたんだ」
「…………」
私が無言を返したからなのか、貴博さんはちょっとバツの悪い表情をしていた。
「真白をダシにして悪かった」
「いえ……その、別に怒っているわけではないんです。ただ……」
「ただ?」
「戸惑ってます」
意に沿わないことをすすめられる苦痛ってのは私も知っているから別にそれはいいんだけど、貴博さんがそんな昔から外堀を埋めるようなことをしていたのかと思うと、なんと思えばいいのか分からなかったのだ。
私が鈍いってのもあるけれど、本当にそんなそぶりを見せなかったから、やっぱりすごく戸惑ってしまう。
「貴博さんは」
「ん?」
「私のことをそんな昔から本気で好きだったんですか」
そう質問しておいてなんだけど、恥ずかしくなった。そういえば以前も聞こうとして、口にできなかったのを今更ながら思い出した。
「空回りしている自覚はあったけど、真白のこと、本気で好きだった」
「だったって過去形なんですね」
「相変わらず、鋭いつっこみを入れるな」
貴博さんは困ったように眼鏡を押さえると、大きくため息をついた。それから私の耳元に顔を近づけて、囁いた。
「今は愛してるから」
「────っ!」
いつもより人が少ないとはいえ、ここは電車内だ。公共の場でとても恥ずかしいことを言われ、私は慌てた。今の言葉、周りに聞こえていたらどうするのよ!
焦って周りを見回したら、貴博さんに笑われた。
「真白はほんと、初心だなあ」
「そういう問題じゃないですよ! ここは公共の場ですよっ」
恥ずかしくて真っ赤になって怒ると、貴博さんは私をなだめるように頭を撫でてきた。その行為がさらに私の恥ずかしさに拍車を掛ける。ちょっと勘弁してくださいって!
だけど、貴博さんの手が気持ちがよくて、恥ずかしいけれど振り払えない。
「だれにも懐かなかった野良猫がどんどん俺のものになっていく」
「私は猫ではないですって!」
反論をしたけれど、急激に貴博さんに惹かれているのは自分でもすごく分かっていた。
「んー、五年前からだな」
いやだから、どうして五年前っ?
「早く所帯を持つように言われて、見合いをさせられそうになったんだ。そんなの、まっぴらごめんだったから、好きな人がいるから見合いはしないって伝えたんだ」
「…………」
私が無言を返したからなのか、貴博さんはちょっとバツの悪い表情をしていた。
「真白をダシにして悪かった」
「いえ……その、別に怒っているわけではないんです。ただ……」
「ただ?」
「戸惑ってます」
意に沿わないことをすすめられる苦痛ってのは私も知っているから別にそれはいいんだけど、貴博さんがそんな昔から外堀を埋めるようなことをしていたのかと思うと、なんと思えばいいのか分からなかったのだ。
私が鈍いってのもあるけれど、本当にそんなそぶりを見せなかったから、やっぱりすごく戸惑ってしまう。
「貴博さんは」
「ん?」
「私のことをそんな昔から本気で好きだったんですか」
そう質問しておいてなんだけど、恥ずかしくなった。そういえば以前も聞こうとして、口にできなかったのを今更ながら思い出した。
「空回りしている自覚はあったけど、真白のこと、本気で好きだった」
「だったって過去形なんですね」
「相変わらず、鋭いつっこみを入れるな」
貴博さんは困ったように眼鏡を押さえると、大きくため息をついた。それから私の耳元に顔を近づけて、囁いた。
「今は愛してるから」
「────っ!」
いつもより人が少ないとはいえ、ここは電車内だ。公共の場でとても恥ずかしいことを言われ、私は慌てた。今の言葉、周りに聞こえていたらどうするのよ!
焦って周りを見回したら、貴博さんに笑われた。
「真白はほんと、初心だなあ」
「そういう問題じゃないですよ! ここは公共の場ですよっ」
恥ずかしくて真っ赤になって怒ると、貴博さんは私をなだめるように頭を撫でてきた。その行為がさらに私の恥ずかしさに拍車を掛ける。ちょっと勘弁してくださいって!
だけど、貴博さんの手が気持ちがよくて、恥ずかしいけれど振り払えない。
「だれにも懐かなかった野良猫がどんどん俺のものになっていく」
「私は猫ではないですって!」
反論をしたけれど、急激に貴博さんに惹かれているのは自分でもすごく分かっていた。