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テンプテーション【完結】
第2章 自覚する想い
 まさか自分が電車の中でこんな馬鹿っぷるみたいなやりとりをすることになるとは思わなかった。すごく恥ずかしいけれど、あまりの出来事に地に足がついていないみたいにほんわりしていた。
 それからは無言のまま、私たちは電車に揺られていた。窓から差し込む日差しが思ったよりも温かくて、貴博さんに半歩ほど身体を寄せた。
 車内アナウンスが実家の最寄り駅を伝えてきて、正気に戻った。
 ……貴博さんの側はとても居心地がよくて、つい油断してしまう。思わず身体を寄せてしまっていたことに気がついて、恥ずかしくなった。そのことに貴博さんが気がついていませんように。
 そんなことを願いながら電車を降りて、改札を出たところで貴博さんは少し困った表情を向けてきた。
「真白はほんと、俺に対して気を緩めすぎだろ」
「なにがですか?」
 もしかして、気がつかれた?
「さりげなく近寄ってくるから、抱きしめたくなるのを我慢するのが大変だったぞ」
 やっぱり気がつかれていた……!
「今日はうちに泊まりに来いよ?」
「え……」
「離してやらない」
 なんだかよく分からないけど、本日は貴博さんの部屋にお泊まり決定となったようです。
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