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テンプテーション【完結】
第2章 自覚する想い
 本気で分からなくてそう返したら、貴博さんはがっくりとうなだれた。
 あれ? なにか悪いことをした?
「天然相手は辛いな」
「天然ってなんですか!」
「真白は結婚しても、今のあの部屋に住むの?」
 そう聞かれて、ようやく貴博さんがなんの話をしていたのか繋がった。
 え、いやっ。
 たっ、確かに私の実家は両親が結婚したときに購入したという話をしたけど! 新居と結婚がなぜだか結びついていなかった。まだ自分が貴博さんのプロポーズに応えたということの実感がない。
「俺、やっぱりまだ空回りしてる?」
 そういわれて思い出したのは、ケージの中でからからと回し車で遊んでいるハムスターだった。それはなにか違うと思う。
「貴博さんはハムスターより犬って感じです!」
「猫に犬か」
「……あ」
 思ったことをストレートに口に出してしまい、慌てて手で口を押さえたけど遅かった。
「犬で自分の尻尾を追いかけてるヤツがいるよな、たまに」
「いますね」
「俺はそれか」
「あー……」
 うちの犬もたまにやってたわ、それ。
「……貴博さん、やっぱり犬ですね!」
 そう思うと急に貴博さんの頭の上に耳が見えるような不思議な感覚。あー、すごくかわいい。撫で撫でしたい!
 うずうずしていると、がっかりと肩を落とされた。
「真白にとって俺って犬と一緒?」
「え……、と。犬だったら一緒にご飯、食べられないですよね?」
「……まあ、な」
「だから違いますよ!」
 と言った後、貴博さんはますます落ち込んだように見えた。今の発言、フォローにならなかった……?
 なんといえば良かったのか分からなくておろおろしていると、後ろから頭を捕まれるようにして撫でられた。その手が気持ちよくて、思わず身体を委ねそうになったけれど、ここは外だし、私たちは歩いているところだ。
 貴博さんの手は緩むどころか結んでいた髪の毛をぐちゃっとされた後、シュシュを外された。
「真白、首筋にキスマークがついてる」
「えっ!」
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