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テンプテーション【完結】
第2章 自覚する想い
*
私たちが呆気にとられている間に兄と姉は車に乗って帰ってしまった。
完全に取り残されてしまった私は貴博さんの顔を見て、それから実家を見た。
玄関にはうなだれた父とそれを慰めている母。
これは出直した方が良さそうだと思っていたら、母がめざとく私たちを発見してしまった。
「あら、真白!」
見つかってしまったのなら、仕方がない。私は貴博さんを連れて、両親へと近寄った。
「もう少し早かったら面白いものが見れたのに!」
面白いかどうかは分からないけど、見てしまいましたよ、ええ。
「面白くもなんともないっ!」
父はかなりご機嫌斜めのようだ。
「良一がね、穂坂さんとこの莉子ちゃんを妊娠させちゃったのよ」
「はあ……」
「沙耶はあなたと同級生の相沢くんとだし、それでお父さんが切れちゃって……」
そりゃあ一度に来たら驚きますよね、普通。私も大変、驚きました。
「それで」
父は不機嫌にぎろりと私の後ろに立っている貴博さんをにらみつけた。
いやぁ、いろいろと間が悪かった。
だけど、貴博さんは怯むことなく私の前に出て、深く頭を下げた。
「わたくし、月野木貴博と申しまして、真白さんが勤めている会社で産業医をしております」
「まぁ、お医者さん!」
母の合いの手に父はさらに険しい表情になった。
「うるさいっ」
あちゃー。父は大変、機嫌が悪いようだ。
「今日はご挨拶に伺ったのですが、日を改め……」
「なくてもいいわよ! ほら、あなた! 中へ入ってもらって!」
特に急ぐことでもないし、このいたたまれない空気の中で報告するのもなんだか嫌だ。だから帰るということを伝えようとしたら、父の視線が私へと向いた。すごく嫌な予感。
「まさかおまえも子どもが出来たとか言わないよな?」
なっ、なんという恥ずかしいことを聞いてくるのよ!
私は慌てて頭を振って全力で否定した。
そんな行為、昨日、初めてしましたから! と考えて、恥ずかしくて真っ赤になった。
うわあああ、恥ずかしいぃぃぃ!
私が真っ赤になってぶんぶんと首を振ったからか、父は少しだけ表情を緩めた。
「……それならばここで話だけは聞こう」
「あなた! お客さまを玄関先でなんて!」
私たちが呆気にとられている間に兄と姉は車に乗って帰ってしまった。
完全に取り残されてしまった私は貴博さんの顔を見て、それから実家を見た。
玄関にはうなだれた父とそれを慰めている母。
これは出直した方が良さそうだと思っていたら、母がめざとく私たちを発見してしまった。
「あら、真白!」
見つかってしまったのなら、仕方がない。私は貴博さんを連れて、両親へと近寄った。
「もう少し早かったら面白いものが見れたのに!」
面白いかどうかは分からないけど、見てしまいましたよ、ええ。
「面白くもなんともないっ!」
父はかなりご機嫌斜めのようだ。
「良一がね、穂坂さんとこの莉子ちゃんを妊娠させちゃったのよ」
「はあ……」
「沙耶はあなたと同級生の相沢くんとだし、それでお父さんが切れちゃって……」
そりゃあ一度に来たら驚きますよね、普通。私も大変、驚きました。
「それで」
父は不機嫌にぎろりと私の後ろに立っている貴博さんをにらみつけた。
いやぁ、いろいろと間が悪かった。
だけど、貴博さんは怯むことなく私の前に出て、深く頭を下げた。
「わたくし、月野木貴博と申しまして、真白さんが勤めている会社で産業医をしております」
「まぁ、お医者さん!」
母の合いの手に父はさらに険しい表情になった。
「うるさいっ」
あちゃー。父は大変、機嫌が悪いようだ。
「今日はご挨拶に伺ったのですが、日を改め……」
「なくてもいいわよ! ほら、あなた! 中へ入ってもらって!」
特に急ぐことでもないし、このいたたまれない空気の中で報告するのもなんだか嫌だ。だから帰るということを伝えようとしたら、父の視線が私へと向いた。すごく嫌な予感。
「まさかおまえも子どもが出来たとか言わないよな?」
なっ、なんという恥ずかしいことを聞いてくるのよ!
私は慌てて頭を振って全力で否定した。
そんな行為、昨日、初めてしましたから! と考えて、恥ずかしくて真っ赤になった。
うわあああ、恥ずかしいぃぃぃ!
私が真っ赤になってぶんぶんと首を振ったからか、父は少しだけ表情を緩めた。
「……それならばここで話だけは聞こう」
「あなた! お客さまを玄関先でなんて!」