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テンプテーション【完結】
第3章 囲い込まれる野良猫
「真白……?」
 ゆさゆさと身体を揺すられて、ハッと目が覚めた。
 貴博さんがお風呂から上がってくるのを待っていたら、私はいつの間にかソファでうたた寝をしていたようだ。
「疲れたよな……?」
「さすがに疲れましたね」
「それなら、寝室のベッドで先に寝ておいてくれないか」
「貴博さんはどうするんですか……?」
「真白には申し訳ないんだけど、一緒のベッドで寝るよ」
 ここで寝るだとか、床で寝ると言われたらどうしようかと思っていたから、ベッドで寝ると言ってくれて良かったけれど、貴博さんのベッドってそんなに大きかった?
「ちょっと狭いかもだけど、新居が見つかるまでの我慢だから」
 やっぱり今日からここで私も一緒に生活ですか?
「同棲みたいでいいよな」
 と言われてみれば確かにそんな感じだけど、なんというか、嬉しいけれど複雑な気分だ。
 寝る準備をしてから寝室へと向かった。ベッドサイズはたぶんだけど、セミダブル。窮屈だけど二人で眠れないこともない。
「それでは、失礼します……」
 部屋には私しかいないけれど思わず断りの言葉を口にしてからベッドに潜り込む。布団からは貴博さんの匂いがした。
 かなり恥ずかしいけれど、これはこれで嬉しい。
 なんだか妙な興奮を覚えて目がらんらんと冴えてきたような気がしたけれど、何度か寝返りを打っているうちに気持ちがよくなってきて、気がついたら眠っていたようだ。
 貴博さんがいつ布団に入ってきたのさえ気がつかず、私はそのまま朝まで眠ってしまった。
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