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テンプテーション【完結】
第3章 囲い込まれる野良猫
     *

 経験がなさすぎて、貴博さんから与えられる気持ち良さをどうすればいいのか分からなくて抱きついたのだけど、そうすると余計に感覚が鋭敏になったのか、より感じてしまう。
 気持ち良さに息が上がり、そして勝手に口から恥ずかしい喘ぎが洩れてしまう。
「た……か、ひろ、さんっ」
「どうした?」
「ど……して、そんなに余裕そう……なんですか」
 私だけこんなに喘いで恥ずかしいし、そしてなんだか申し訳ないと感じてしまう。
「余裕ならないよ。今、必死に抗ってる」
 なにを抗っているのか分からないけれど、別に我慢しなくてもいいような気がする。
「そんな潤んだ瞳で見つめられると、もっと乱れさせたくなる」
「これ……以上、は、も……むり」
「分かってる。真白は少し臆病なところがあるから、少しずつ慣れていこう」
 その優しさに私はどうすればいいのか分からず、貴博さんにきゅっと抱きついた。
「それ」
「……はい」
「なんかもう、たまんないんだけど」
 なにがどうたまらないのか分からないけれど、貴博さんがとても嬉しそうだから首に腕を回して抱きしめたら、キスが深くなった。初心者の私にそのキスはちょっと無理ですって!
 舌を強く絡められ、擦られ、口内を舐め尽くすように舐められ、歯列をなぞられた。そのどれもがぞくぞくとした感覚を産むものだった。
「た……っ」
 名前を呼びたくても、すぐに口を塞がれてしまうから困った。
 どうにか鼻で息をするけれど、貴博さんの愛撫とキスとで息が上がり、満足に酸素が供給されなくてくらくらしてきた。
「貴博さんっ!」
 ようやく口を離してくれたから名前を呼ぶと、今まで見たことがないくらい色っぽい視線を向けられて、さらにくらくらしてきた。
 なんで男の人なのにそんなに色気があるのですか! だだ漏れじゃないですかっ!
「真白がすごく乱れてくれるのが嬉しい」
「なっ……、なにをっ」
「こことか」
 そういって貴博さんは私の耳朶に顔を近づけ、ぺろりと舐めた。そのときの水音が耳に響いてぞくりとして、思わず肩をすくめた。
「首筋も弱いし、すごい敏感」
「んっ……」
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