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忘れられる、キスを
第13章 デート
「お化け、怖い?」
「う……そんな、こと…」

怯む私を尻目に星くんはさくさくと順路を進んでいく。

正直にいえば、ジェットコースターの100倍くらいお化け屋敷は苦手だ。
というより、暗闇に何が潜んでいるのかわからない状況が堪らなく怖くて、嫌いだった。

このお化け屋敷は古いカートのような乗り物に乗り、じりじりとかなりゆっくりのスピードで三十分ほどかけて、廃病院を巡る、というものだ。
程なくして私たちの順番となり、わくわく顔の星くんに続いてカートに乗り込む。

カタカタ…と音を立て暗闇の中へ吸い込まれる。
私は思わず星くんに身体を寄せた。

「やっぱ、怖いんだ?」
「…………」
「怖いなら、こうしててあげる」

小さな声で言われ、右手で右耳を塞がれ、頭をぐっと引き寄せられる。
耳を塞がれたことで、院内に鳴り響く不気味な音楽と怪奇音が少し和らぐ。
と、突然、ガシャンガシャンと音を立て入院服を着た血だらけのゾンビがカートの端を掴んだ。

「きゃああああああああっ」

余りの恐怖で反射的に星くんにしがみつく。
星くんの指先がぴくりと動く。

「……ったく…そういうの、ヤバいって…」

小さく声が聞こえた。
何が起こるか分からない暗闇の恐怖に星くんを掴む指先に力が入る。

「…もう、そんな怖いなら……分かんなくしてあげるよ」

星くんが暗闇の中で、にやりと笑ったような気がした。


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