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忘れられる、キスを
第14章 無意識
「じゃあ、ここで待っててください。俺、買って来るんで」

園内に併設されているレストランや屋台の前に設置されたカフェスペースは、昼時で混んではいたが、俺たちはなんとか空いてる場所を見つけることが出来た。

「帰んないで下さいよ?」
「んー…それは、星くんの心掛け次第」

頬杖をついて、俺を見上げる。
お化け屋敷でビビって半泣きになっていたのと同一人物とは思えない大人の余裕をかましてくる。

ああ、ほんと、こういうの、堪らない…

ふつふつと俺の中で何かが込み上げてくる。
三つも年上とは思えないほど子どもみたいな振る舞いをしたかと思えば、突然どきりとさせるような大人の女を匂わせてくる。
本人は全く意識などしていないのだろうが、この落差に俺は、多分、ずっと心を掴まれている。

「す、すぐ戻るから、動かないで!」

ドキドキしているのを気付かれたくなくて、俺は早口で言って、少し離れたところにある屋台へ向かった。
なんでも、園内で一番人気の巨大ホットドッグがあるらしい。
一番人気というだけあり、屋台の周りには人だかりが出来ていた。
列の後ろに並びながら、先輩のいる方を見やる。
ここからだと、木やらなにやらが邪魔になり、先輩は見えない。
さすがにこっそり帰ってしまう…というのはないと信じたいが、なかなか進まない列に焦ったさを感じていた。



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