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忘れられる、キスを
第2章 泣き顔
「何があったか、話せないんすか?」

ハンカチを渡してきいてみる。
先輩は俯いたまま。

握った左手の指先はすっかり冷え切っていた。
季節は冬。
屋内とはいえ、暖房のつかないサークル棟の踊り場の空気は冷たい。
コートを着ていても、だんだんに身体が冷えてくる。

ちらっと先輩の荷物の置いてある方に目をやると、鞄ともうひとつ。
有名チョコレート店の小さな紙袋。

先輩の泣いてる原因は、多分、これ。

「えっちゃん先輩、どっか、あったかいとこ行きましょ。んで、なんか食べましょ」
「ん…」

小さく頷いて、立ち上がる。

左手は離さない。

先輩の荷物を持つと、俺は引っ張るようにサークル棟を出た。

「ほ、星くん…」

先輩が何か言っているが、無視。
人もまばらになった構内を抜け、大学から歩いて10分。

「ここ…」
「ん、俺の家」

先輩は戸惑っているようだったけれど、他に行く当てもないし、第一、先輩の泣き顔を他の奴に晒す趣味はない。

「片付けてないけど、どうぞ」

ドアを開けると、恐る恐る先輩が入ってきた。

「お邪魔します…」

白っぽいパンプスを脱いで、隅に寄せる。
膝丈のコートを脱ぐと、下はモスグリーンのワンピース。
パールのネックレスがよく似合っている。
ああ、なんて可愛らしい…
顔は涙でぐちゃぐちゃだけど。

「ちょっと待っててください、今お湯沸かすんで」

椅子に座らせ、俺がキッチンに向かうと、少しほっとしたような表情になった。

なんでだよ。
襲われるとでも思ってたわけ?

ちょっと不満がよぎったが、とにかく、さっきよりは落ち着いているみたいで、そのことに俺は安堵した。

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