この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
忘れられる、キスを
第2章 泣き顔
えっちゃん先輩と初めて会ったのはサークルに入ってしばらくしてから。
俺の入学当時、既に4年生だった先輩は就職活動もあり、なかなかサークルには来られなかった。
たまたま、授業の空き時間があり、ふらりとサークル棟の方へ行く途中、あの音が聞こえてきた。
優しく、どこか切なげな、ショパン。
誰だろう。
気になって、階段を上がると、踊り場のピアノを愛おしそうに弾いている人がいた。
見慣れない女の子。同級生?こんな子いたっけ?
不思議に思って見つめていると、ふっつりと演奏が止まった。
「1年生?見学?」
にっこり笑ったその顔に、俺はぎゅっと心臓を掴まれたような感覚に陥った。
「い、1年の星、です」
「噂の新入部員か!初めましてー深町です、4年だからあまり来られないけど…よろしくね」
「よ、よろしくお願いします…」
中学生のようにどぎまぎしながら挨拶をした。
4年生ってもう少し大人っぽい感じを想像していたけど、この先輩はなんか…俺より年下っぽい…?
そんな失礼なことを俺が考えているともしらず、先輩は「学部どこー?」とか「もう演奏会の曲決めたー?」とかのんびり楽しそうに話かけてきた。
先輩は、先輩っぽさがあまり感じられなかった。
同級生からは「えっちゃん」、後輩からは「えっちゃん先輩」とあだ名で呼ばれていたからかもしれない。
童顔に背の低さもあいまって、10代の少女のようでもあった。
けれども、時折、年上の人間の持つ余裕のようなものも垣間見え、そのギャップがなんともいえなかった。
サークルの他の先輩や学部の同級生たちですら、そんな雰囲気を持つ人はいなかった。
そんな雰囲気と気取らない性格にも惹かれ、俺は先輩を見かけるたびに、寄っていっては話しかけていた。
俺の入学当時、既に4年生だった先輩は就職活動もあり、なかなかサークルには来られなかった。
たまたま、授業の空き時間があり、ふらりとサークル棟の方へ行く途中、あの音が聞こえてきた。
優しく、どこか切なげな、ショパン。
誰だろう。
気になって、階段を上がると、踊り場のピアノを愛おしそうに弾いている人がいた。
見慣れない女の子。同級生?こんな子いたっけ?
不思議に思って見つめていると、ふっつりと演奏が止まった。
「1年生?見学?」
にっこり笑ったその顔に、俺はぎゅっと心臓を掴まれたような感覚に陥った。
「い、1年の星、です」
「噂の新入部員か!初めましてー深町です、4年だからあまり来られないけど…よろしくね」
「よ、よろしくお願いします…」
中学生のようにどぎまぎしながら挨拶をした。
4年生ってもう少し大人っぽい感じを想像していたけど、この先輩はなんか…俺より年下っぽい…?
そんな失礼なことを俺が考えているともしらず、先輩は「学部どこー?」とか「もう演奏会の曲決めたー?」とかのんびり楽しそうに話かけてきた。
先輩は、先輩っぽさがあまり感じられなかった。
同級生からは「えっちゃん」、後輩からは「えっちゃん先輩」とあだ名で呼ばれていたからかもしれない。
童顔に背の低さもあいまって、10代の少女のようでもあった。
けれども、時折、年上の人間の持つ余裕のようなものも垣間見え、そのギャップがなんともいえなかった。
サークルの他の先輩や学部の同級生たちですら、そんな雰囲気を持つ人はいなかった。
そんな雰囲気と気取らない性格にも惹かれ、俺は先輩を見かけるたびに、寄っていっては話しかけていた。