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忘れられる、キスを
第15章 観覧車
「人の見て、コーフンしてんの?」

いきなり耳元で囁かれ、思わず飛び退いてしまう。

「な、ち、ちが…そんな…み、見てな…」
「顔真っ赤〜先輩やらしーなー」

にやにやと星くんが笑う。
手首を掴まれ、星くんが距離を詰める。
また、キスされる。
身体が硬直し、思わず、ぎゅっと目を閉じた。
数秒の沈黙。
何も起こらない。

「キス、されると思った?」
「ひゃ…う…ちが…」

また耳元で囁かれ、しどろもどろになってしまう。
星くんの顔が近い。

「まあ、この状況なら俺の気の済むまでしてしまいたいですが」
「し、しちゃだめ…」
「今日は拒否権ないって、言ったでしょ。でも、今はしない」

星くんが元の向きに座り直して、遠慮がちに、上のゴンドラを視線で示す。

「あの男の方、さっきからチラチラこっち見てる。きっと、ああやって、俺たちのこと煽って、同じことさせようとしてるんだと思う」
「な、なんでそんな…」
「人のヤってるとこみながらヤりたいんでしょー変態め…」

星くんの顔が不愉快そうに歪む。

「先輩のキス顏も、感じてる顔も、見ていいのは俺だけ」

そう言って、上のゴンドラから私を隠すように抱きしめる。
とくん、とくん、と聞こえる心臓の音は、星くんの?
それとも…

離れたくても、抗えず、そのまま静かな時間が過ぎていった。



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