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忘れられる、キスを
第15章 観覧車
観覧車から降りたあと、星くんは上機嫌で園内のあちこちを回った。
気が付けば、明るい青だった空が、赤く染まり、群青色の夜が近づいてきていた。
園内の街灯やイルミネーションもつき、昼よりも幻想的な雰囲気になっていた。

「結構遊びましたね。そろそろ帰りますか?」
「そうだね。……あ」

うなづいて、星くんを見上げ、視線がその後ろに囚われる。
薄暗くなった園内でひときわ輝くメリーゴーラウンド。
きらきらとした電飾の光が、馬や馬車に施された煌びやかな飾りに反射している。
華やかで楽しげな音楽も流れ、まるで、舞踏会の会場のようだ。

「きれい…」

思わずため息が出る。
乗ると、お姫様になったように思えて、小さいころはメリーゴーラウンドが大好きだった。

「先輩、ほんとはジェットコースターとかよりこっちが良かった?」

星くんが笑いながら聞いてくる。

「懐かしいなあって思って…」
「せっかくだし、最後、これ乗ってこ」

星くんが列に向かって歩き出したので、慌てて引き止める。

「だ、大丈夫…恥ずかしいし……今日、スカートだし…」

履いてきた短めのスカートの裾を思わず握りしめる。
この長さで馬にまたがるのはちょっと…

「馬車に乗ればいいでしょ」

星くんが私の左手を取る。

「さあ、いきましょう、お姫様」

キザったらしい言い回しに、自分の顔が紅くなるのを感じた。


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