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忘れられる、キスを
第17章 告白
「えっちゃんせんぱーい」

仕事を終えた旨を伝えるメールをすると、迎えに行くので駅に来てください、とすぐさま返信があった。
メールのとおり駅へ向かうと、改札口の方から私の名前を叫び、走ってくる人影が見えた。

「は、恥ずかしいから、叫ばないで…」
「久しぶりに会えて嬉しくて、つい…」

星くんのお得意の、つい、を、つい、私も許してしまう。

「この近くで、行きたいところがあるんです」

そう言って、私の手を取る。
駅前を通り過ぎ、飲食店が所狭しと並ぶ通りへと入った。
ここです、と案内されたのは創作イタリアン料理を出すダイニングバーだった。
会社の近くにこんなところがあるなんて、知らなかった。
星くんは近づいて来た店員の男性に二人、と告げる。
案内されたのは衝立で仕切られた半個室の小さな席だった。
せっかくのお祝いなので、シャンパンを頼んだ。
細いフルートグラスの中でシュワシュワと泡を立てる様子が涼しげだ。
チンッと小気味よい音を立て、グラスが触れ合う。

「就職、おめでとう」
「ありがとうございます」

星くんが美味しそうにシャンパンを飲んだ。

「俺と会えない間、寂しかった?」
「えっ…いや…」

寂しいとか会いたいとかあまり考えていなかった…というより、仕事が忙しく、それを考えられるほどの余裕はなかった。
曖昧に答えを濁す私に星くんは少し不満げな顔をしてみせた。


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