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忘れられる、キスを
第17章 告白
「なにを今更…って思うかもしれないけど、聞いて欲しいことがあるんだ」
倉田先輩は真っ直ぐこちらを見ている。
目が、合わせられない。
二人の間を流れる沈黙が、重い。
「おれがね、大学でピアノを続けられたのは、深町さんのおかげなんだ」
「え?」
ぽつりと言った先輩の言葉に思わず顔をあげる。
目が合うと、先輩がふわりと笑った。
私の大好きな、微笑み。
「踊り場で弾いてた時、深町さんが来てくれたから、ピアノ辞めずに済んだんだ」
先輩は、ゆっくりと、自分のことを話し始めた。
家のこと、これまでのこと、将来のこと。
その話の中の先輩は、私がこれまで全然知らない先輩だった。
「情けないよね、自分のこと、何一つ自分で決められないなんて」
自嘲気味に先輩が言う。
「でも、おれは、家を、家族を、棄てられない…だから、君を選べなかった」
先輩の眉尻が困ったように下がる。
「おれ、深町さんの気持ち、ずっと気付いてて、利用してた」
「え…」
「おれを、単なる倉田崇を慕ってくれる深町さんなら、曖昧に引き留めても、待っててくれる、って…はっきりさせなければ、いつまでも、おれに純真な好意を寄せ続けてくれるって…そう思って、利用してた」
本当に、申し訳ない、と先輩が頭を下げた。
倉田先輩は真っ直ぐこちらを見ている。
目が、合わせられない。
二人の間を流れる沈黙が、重い。
「おれがね、大学でピアノを続けられたのは、深町さんのおかげなんだ」
「え?」
ぽつりと言った先輩の言葉に思わず顔をあげる。
目が合うと、先輩がふわりと笑った。
私の大好きな、微笑み。
「踊り場で弾いてた時、深町さんが来てくれたから、ピアノ辞めずに済んだんだ」
先輩は、ゆっくりと、自分のことを話し始めた。
家のこと、これまでのこと、将来のこと。
その話の中の先輩は、私がこれまで全然知らない先輩だった。
「情けないよね、自分のこと、何一つ自分で決められないなんて」
自嘲気味に先輩が言う。
「でも、おれは、家を、家族を、棄てられない…だから、君を選べなかった」
先輩の眉尻が困ったように下がる。
「おれ、深町さんの気持ち、ずっと気付いてて、利用してた」
「え…」
「おれを、単なる倉田崇を慕ってくれる深町さんなら、曖昧に引き留めても、待っててくれる、って…はっきりさせなければ、いつまでも、おれに純真な好意を寄せ続けてくれるって…そう思って、利用してた」
本当に、申し訳ない、と先輩が頭を下げた。