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忘れられる、キスを
第18章 期間限定
「せーんぱいっ」
「わわっ…ほ、星くん、いつの間に…」

倉田先輩が一人、駅の方へ歩き出し、見えなくなるのを確認してから、えっちゃん先輩の背中に声をかけた。

「先輩、顔、紅いよ」
「え、あ、そ、そう?」

しどろもどろになる先輩。
俺がキスシーンを見てたって知ったら怒る…かな。

「サヨナラ、言えた?」
「ん…ありがとう。星くんの、おかげ」

えっちゃん先輩は少しだけ泣きそうな顔で、それでも笑って、もう一度、ありがとう、と言った。

「じゃあ、もういいよね」
「え?」
「俺と、付き合うの」

途端に、先輩が困り顔になる。
さっきのキスで、心、また持ってかれた?なんてきけない。

「それは…その…」
「もっと、軽く考えていいよ。先輩は難しく考えすぎ」

先輩の視線が地面に落ちる。

「俺のこと、やっぱ、嫌い?」
「そんなこと…ない……」
「じゃあ、いいじゃん」

恋愛なんて、そんなもん、でしょ?
付き合ってみて、色々やってみないことには分からないことだってあるよ?

「…ズルく、ない?」
「なんで?」
「星くんの、優しさに甘えて、寄りかかってるんだよ、私」
「いいじゃん、それで。ズルくていいの」

世の中の女の子は…いや男も、みんなズルいよ。
去り際にキスを残す、倉田先輩然り。
弱ってる先輩の心につけこむ、俺も然り。

「いいんだよ、甘えたって」

その言葉に、先輩は困ったように目を伏せた。


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