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忘れられる、キスを
第20章 焦り
その感覚は一気に俺を現実へと引き戻した。
入りかけた指先がまたも、するりと足の間から抜けていく。

「あ…ごめ…んな、さい…」

組み伏せた先輩が、俺の下からか細い声で言う。
その表情が苦しくて、すっと身体を離した。

「ごめん、ちょっと、トイレ」

それだけ言って、トイレに籠る。
下着の中に窮屈に収まっていた俺を取り出す。
熱く、勃ち上がったそれをまだ先輩の蜜の絡みつく指で扱く。

「…っく……そ…」

目と鼻の先に、愛しい先輩がいるというのに、トイレに籠り、自分自身を慰めている状況に情けなさと惨めさでいっぱいになる。
それでも、目を閉じれば、先ほどまでの先輩の淫らな姿が瞼の裏に焼き付いて離れず、それはより一層俺を駆り立てた。

ようやく治めて、部屋に戻ると、先輩は半裸の状態で毛布に包まっていた。

「あ、星くん…」
「ごめん、嫌だった?」

ベッドの端に腰掛けると先輩が俯き加減に話す。

「ごめんな、さい…こ、怖くて…」
「俺も…また、焦った」

こんな調子じゃ、ちゃんと好きになってもらう前に、嫌われてしまう。

「キスも、怖い?」
「ん、少し…」

伏し目がちに喋る先輩の顎を持ち上げる。
ぴくりと肩が揺れた。

「怖くない、キスするから」

そっと額に口付けて、毛布ごと先輩を抱きしめた。





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