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忘れられる、キスを
第21章 ためらい
何とか七時前に仕事を切り上げ、会社を出ることができた。
梅雨明けの気配はなく、冷たい雨がしとしとと降り続いていた。
一応、星くんに連絡をしようと立ち止まったところで、肩を叩かれた。
「深町、今帰りか?」
「さ、佐野さん…」
思わず後ずさる。
やっぱり、この人、少し苦手…
けれど、仕事をする上での上司なのだ。
何をしたわけでもない。
少々スキンシップが多いのだ。
早坂さんも肩を叩いたり、頭を撫でたりするではないか。
そう、自分に言い聞かせ、奮い立たせる。
「ちょっと一杯飲みに行かないか?最近、忙しかったし。深町には色々助けられてるからな」
「きょ、今日は…か、帰らないといけなくて…」
ぎゅっと手の中の携帯を握りしめる。
「なんだー?彼氏とデートか?」
画面を覗き込まれそうになってまた、一歩、後ずさる。
どうしよう。
言葉が出てこない。
「仕方ない奴だな。まあ、いい。次にしよう」
そう言うと、佐野さんは、気を付けて帰れよ、と手を振った。
ぺこり、とお辞儀だけして、足早に会社を離れる。
ああ、びっくりした…
鼓動が早まっていることに、駅に着いてから気づいた。
これまでこんなことなかったのに…
不穏な気配を振り払うように、かぶりをふった。
梅雨明けの気配はなく、冷たい雨がしとしとと降り続いていた。
一応、星くんに連絡をしようと立ち止まったところで、肩を叩かれた。
「深町、今帰りか?」
「さ、佐野さん…」
思わず後ずさる。
やっぱり、この人、少し苦手…
けれど、仕事をする上での上司なのだ。
何をしたわけでもない。
少々スキンシップが多いのだ。
早坂さんも肩を叩いたり、頭を撫でたりするではないか。
そう、自分に言い聞かせ、奮い立たせる。
「ちょっと一杯飲みに行かないか?最近、忙しかったし。深町には色々助けられてるからな」
「きょ、今日は…か、帰らないといけなくて…」
ぎゅっと手の中の携帯を握りしめる。
「なんだー?彼氏とデートか?」
画面を覗き込まれそうになってまた、一歩、後ずさる。
どうしよう。
言葉が出てこない。
「仕方ない奴だな。まあ、いい。次にしよう」
そう言うと、佐野さんは、気を付けて帰れよ、と手を振った。
ぺこり、とお辞儀だけして、足早に会社を離れる。
ああ、びっくりした…
鼓動が早まっていることに、駅に着いてから気づいた。
これまでこんなことなかったのに…
不穏な気配を振り払うように、かぶりをふった。