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忘れられる、キスを
第23章 スターライト
戻ってきた星くんは着替えて、荷物も持っていた。
お疲れさまです、と明るく影山さんと伊東さんに声かけ、扉を開ける。

「あの、星くん…?」
「先輩のこと、家まで送ってっていいって」

相変わらず、ぱらぱらと細かい雨が降っていた。
傘を広げようとすると、待って、と星くんが止める。
ばさっと真っ青な傘が開かれた。

「これ、やってみたかったんだ」

どうぞ、と傘を傾ける。
少し、ドキドキしながら、その中に入る。

「あの、さっき、伊東さんと、何話してたんですか」

こちらを見ずに星くんが言う。

「何って…星くんの演奏良かったって話…」
「それだけ?」

何か言いたげに、口を開きかけ、閉じてしまう。
しばしの沈黙に、雨の音が大きく聞こえる。

「楽しそうだったから…」
「え…?」

ぼつりと星くんが呟く。

「伊東さん、かっこいいし、伊東さん目当てで来るお客さんとかもいるし…珍しく、自分からお酒出してたし……」

相変わらず、こちらを見ず、歯切れ悪く喋る。
信号が点滅し、立ち止まった。

「先輩は、今は、俺のだから…よそ見とかしたらダメ」

そう言って傘を前に傾け、私にかぶさるように身体をかがめ、そっと唇を重ねてきた。

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