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忘れられる、キスを
第24章 泊まり
「ごめんなさいっ、つい…!」

顔の前で両手を合わせる。
先輩は俺に構わず、ベッドに入り、布団をかぶってしまう。

「もうしないから…!お願い、一緒に…!!」
「へ、変なことするから…やだ…」

鼻の上まで毛布を引き上げて、目だけがこちらを見ている。

「ゆ、床で寝たら身体痛いし、風邪ひくかもだし…!そしたらバイトも授業も休まないとだけど、そうすると色々周りに迷惑が…」

先輩はまだじとっとこっちを見ていたが、しばらくして、身体をずりずりとずらし、ベッドの右半分をあけてくれた。

「変なこと…」
「しない!」

パチリと電気を消し、素早くそこへと入り込む。
先に寝ていた先輩の温もりに包まれる。

「雨、やんだね」
「ん…もう寝よう…明日…起きられな…」

先輩の声が途切れる。
すぐに、すうすうと規則正しい寝息が聞こえてきた。

「はや…」

この無防備さ。
本当に危機感がなさすぎる。

「襲うよー?」

指先で一房、髪を掬う。
薄く開いた唇に、自分を重ねる。
すうっと透明の糸で繋がって、離れた。

「おやすみ、先輩」

温かな身体を抱きよせて、そっと囁く。
身じろぎひとつしない先輩の鎖骨の下辺りに、口付け紅い痕を残した。
それからもう一度、おやすみ、と言って、俺も目を閉じた。


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