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忘れられる、キスを
第24章 泊まり
「星くん、もう起きなよー」

明るい日の光に思わず目を細める。
俺を覗き込む先輩は、昨日の夜、俺が選んだスカートをはいていた。
薄っすら化粧もしている。
ふわりと、バターの匂いにお腹が鳴る。

「おはよ、先輩」

冷蔵庫から何かを取り出そうとしている後ろから抱きつく。

「顔、洗って」

すげなく言われて、タオルを押し付けられた。
ささっと洗って、洗面所から戻ると既に食事の準備は出来ていた。

「いい匂い」
「早く食べよう、時間なくなっちゃう」

座布団の上に座った先輩がこちらを見上げる。

だから、ダメだって、そんな無防備な顔しちゃ。

しゃがみこんで、唇を合わせる。
苦しそうな声が、先輩の口の端から洩れた。

「んんっ…は…あ、ほ、星く…」
「顔洗ったから、いいでしょ」

もう一度。
貴女は、俺の。
確かめるように、キスをする。

「も……ん…っは……」
「……ご飯にしよ」

俺が離れると、先輩が何かを言いたげにこちらをみたが、そのままテーブルに向き直る。
頬は、チークのせいじゃない、何かで紅く染まっていた。

「遅刻したら、星くんのせいだからね」
「うん。キスされて、遅れました、って言っていいよ」

先輩は顔を真っ赤にして、口をぱくぱくさせた。


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