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忘れられる、キスを
第3章 強がり
さっきあんなに泣いたのに、一体どこから出てくるのか。
自分でもびっくりするくらい、涙が溢れて止まらない。

「……っふ…っく……」

声を抑えようとして、膝を抱える。

「また、1人で泣いてる」

頭の上から声がして、ぎゅうっと抱きしめられた。
シャンプーのいい匂いがする。

「なんで、1人で泣くの?」

俺がいるのに、と不機嫌そうな声がした。

「辛いなら、全部出しちゃいなよ。俺、全部受け止めるから」

星くんは私を抱きしめる指先に力を込めた。

「星…くん…」
「倉田先輩、でしょ。チョコ、渡したかったの」
「ん…」

何で分かっちゃうかな…
でも、それがばれてるなら、もう隠すこともないか。

星くんが背中をゆっくりと撫でてくれるお陰で、しゃくりあげておかしくなっていた呼吸が少しずつ落ち着いてきた。

そして、少しずつ、倉田先輩のことを話すことにした。

ずっと、憧れていたこと。
卒業後も、たまに会っていたこと。
先輩後輩の関係を崩したくなくて、気持ちを伝えられなかったこと。
ずるずると、今日まで気持ちを引きずっていたこと。
そして、今日、ドタキャンされたこと。

そんなどうしようもない私の話を星くんは何も言わずにきいてくれていた。

ただ、私の背中を撫でながら。


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