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忘れられる、キスを
第32章 雛鳥
コンビニから帰り、アイスは冷凍庫にしまい、先輩は買い込んだ甘い物をテーブルに並べた。
お茶を淹れて、ベッドを背もたれに座る。
向かい側に座ろうとした俺を引っ張り、隣に座らせた。
ぴったりと、身体をくっつけてくる。
「…暑くないの?」
俺は嬉しいけど。
なんならちょっとドキドキしてるし。
「ん。ちょっとだけ、こうしてて」
「いくらでも」
先輩は生クリームたっぷりのロールケーキをつついていたが、全然減っていない。
「食べないの?」
「ん…やっぱり、星くん、食べる?」
「食べさせてくれるの?」
先輩はちょっと困った顔をして、それでも、スプーンで掬って、俺の方に差し出してくれた。
柔らかなスポンジと控えめな甘さのクリームのバランスが絶妙だった。
「先輩も、食べさせてほしい?」
「じ、自分で食べられるよ…」
「いいから。あーんして」
スプーンを取り上げ、薄っすらと開く唇にそっとスプーンを差し込む。
こくりと、喉が動いた。
もう一口、もう一口、とスプーンを運ぶ。
それは親鳥が、雛鳥たちに餌をやるようだった。
「おいしい?」
「ん…」
口の端についてしまったクリームをそっと拭う。
結局、無くなるまで、俺は先輩の口にケーキを運び続けた。
お茶を淹れて、ベッドを背もたれに座る。
向かい側に座ろうとした俺を引っ張り、隣に座らせた。
ぴったりと、身体をくっつけてくる。
「…暑くないの?」
俺は嬉しいけど。
なんならちょっとドキドキしてるし。
「ん。ちょっとだけ、こうしてて」
「いくらでも」
先輩は生クリームたっぷりのロールケーキをつついていたが、全然減っていない。
「食べないの?」
「ん…やっぱり、星くん、食べる?」
「食べさせてくれるの?」
先輩はちょっと困った顔をして、それでも、スプーンで掬って、俺の方に差し出してくれた。
柔らかなスポンジと控えめな甘さのクリームのバランスが絶妙だった。
「先輩も、食べさせてほしい?」
「じ、自分で食べられるよ…」
「いいから。あーんして」
スプーンを取り上げ、薄っすらと開く唇にそっとスプーンを差し込む。
こくりと、喉が動いた。
もう一口、もう一口、とスプーンを運ぶ。
それは親鳥が、雛鳥たちに餌をやるようだった。
「おいしい?」
「ん…」
口の端についてしまったクリームをそっと拭う。
結局、無くなるまで、俺は先輩の口にケーキを運び続けた。