この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
忘れられる、キスを
第34章 夏休み
「もう、どうしてすぐ…」
「先輩が、好き、とか言うから」
俺の言葉に、ぱっと顔を赤らめる。
「そ、それは…そういう意味じゃ……」
……それ、地味に傷付く。
どんなに唇を重ねても、触れることを許されても、その言葉は、先輩から聞けない。
「ね、倉田先輩に関係ない好きな曲教えて」
「ど、どれも関係な…」
「倉田先輩の弾いてた曲でしょ、ショパンもリストも…あとドビュッシーも」
こんなこと、言うつもりなかったのに。
どの曲を、どんな理由で好きだろうと、先輩の自由だ。
なのに、こんな、責めるみたいに。
「ちょっと、詰めて」
先輩がほんの少し、椅子の真ん中に寄る。
すっと、白い指が鍵盤に乗り、優雅で繊細な旋律が流れ出す。
ラヴェルの「亡き王女のためのパヴァーヌ」。
その旋律を奏でる先輩の表情は、優しく、窓から差し込むきらきらした光の中で弾く姿はとても、綺麗だった。
すぐ真横で、これを見られるのは、俺の特権。
些細な嫉妬に駆られていたことが馬鹿らしくなる。
「この曲ね、初めてピアノの演奏会に行った時に聴いた曲なの」
「ピアノを始めるきっかけ、ってこと?」
「うん、この曲が弾けるようになりたくて、始めたんだ」
聴いてくれて、ありがとう、と先輩がにっこり笑った。
「先輩が、好き、とか言うから」
俺の言葉に、ぱっと顔を赤らめる。
「そ、それは…そういう意味じゃ……」
……それ、地味に傷付く。
どんなに唇を重ねても、触れることを許されても、その言葉は、先輩から聞けない。
「ね、倉田先輩に関係ない好きな曲教えて」
「ど、どれも関係な…」
「倉田先輩の弾いてた曲でしょ、ショパンもリストも…あとドビュッシーも」
こんなこと、言うつもりなかったのに。
どの曲を、どんな理由で好きだろうと、先輩の自由だ。
なのに、こんな、責めるみたいに。
「ちょっと、詰めて」
先輩がほんの少し、椅子の真ん中に寄る。
すっと、白い指が鍵盤に乗り、優雅で繊細な旋律が流れ出す。
ラヴェルの「亡き王女のためのパヴァーヌ」。
その旋律を奏でる先輩の表情は、優しく、窓から差し込むきらきらした光の中で弾く姿はとても、綺麗だった。
すぐ真横で、これを見られるのは、俺の特権。
些細な嫉妬に駆られていたことが馬鹿らしくなる。
「この曲ね、初めてピアノの演奏会に行った時に聴いた曲なの」
「ピアノを始めるきっかけ、ってこと?」
「うん、この曲が弾けるようになりたくて、始めたんだ」
聴いてくれて、ありがとう、と先輩がにっこり笑った。