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忘れられる、キスを
第34章 夏休み
「星くん、今度の演奏会のプログラム決めたの?」
「んー…まだ…」

俺の所属するピアノサークルでは、十一月にある文化祭でミニコンサート、十二月にクリスマスコンサートを行った後、二月に定期演奏会が行われる。

サークルの規模はそれほど大きくないので、予算も少ない。
低予算で演奏会を行うには、学内のホールを借りるのが一番なのだ。

学内行事や講義などの関係で、毎年秋から冬にかけてしか使えないため、演奏会の予定はどうしても詰まってしまう。

「文化祭は?今年は出ない?」
「出るよ。バンドも応援頼まれてるし」

ゼミの友人が結成しているバンドにキーボードで参加することは決まっている。
ミニコンサートの方も、一曲くらい、弾いておきたいが、なかなかこれ、というものが思いつかない。

「先輩来てくれるなら、先輩の好きな曲にするのに」
「リストは?みんな知ってるし」
「俺の、リストでいいの?」

倉田先輩の、ではなく。
俺が、えっちゃん先輩を想って弾く、愛の夢。

「星くんの、リスト、聴きたい」
「そしたら、俺のリストが、先輩の好きなリストになっちゃうけど、いいよね」

俄然やる気が出てくる。
倉田先輩には悪いけど、今、先輩の隣にいるのは、俺。

俺が、えっちゃん先輩の、一番になりたい。
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